2016 Fiscal Year Research-status Report
新世界ザル採食果実の匂い物質から模索する霊長類の感覚生態
Project/Area Number |
16K14818
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河村 正二 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (40282727)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 霊長類 / 感覚生態 / 新世界ザル / 果実採食 / 嗅覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
霊長類は、視覚や聴覚、嗅覚といった感覚を通じて外界の情報を認知している。中でも視覚に関する知見は多く、3色型色覚を持つ霊長類は、遠方の果実などの食べ物を見分ける際に有利であると考えられてきた。しかし、近年の研究から従来の視覚重視の考えに疑問が持たれるようになってきた。ただし、霊長類が食する果実の匂い成分が、成熟に応じてどのように変化しているのか、またこれらの匂いが霊長類の果実の選好性にどのように関与しているのかは、未知である。匂いの他にも、果実は、成熟に応じて色や大きさ、固さなどの様々な性質を変化させることが知られており、霊長類が、果実採食においてどのような特徴を重視し、選択するのかを解明することは、霊長類がどのような感覚を使って採食するのかを理解するうえで非常に重要である。そこで本研究はコスタリカのグアナカステ保全区内サンタロサ地区において、色覚多様性が既知であるノドジロオマキザル(Cebus capucinus) が実際に食する果実の採集を行う。果実は、シリカ母材のカーボングラファイト含有である吸着剤とともに密閉したオーブンバッグに入れ、匂いを捕集した。果実1種につき成熟段階ごとに3段階に分け、それぞれ5回ずつ匂い捕集を行った。現在、4種の果実の成分分析、及び分析結果を基にした主成分分析までが完了している。その結果、いくつかの果実において、成熟段階に応じて果実の揮発性有機物(VOC) の総量や組成が変化していることわかった。また、種によっては熟度による色の変化よりも匂いの変化の方が大きいという結果も得られている。今後より詳細な解析と検討が必要だが、今回の分析の結果、果実の匂いが霊長類の採食行動に大きな手掛かりとなっていることが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外調査により、ノドジロオマキザルの野生群が実際に食する果実の採集を行うことができた。そして、匂いの吸着剤の材質、吸着条件の検討を進展させた。いくつかの果実において、成熟段階に応じて果実の揮発性有機物(VOC) の総量や組成が変化していることわかり、種によっては熟度による色の変化よりも匂いの変化の方が大きいという結果は、今後の研究の弾みとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた匂い成分データと果実種の違い、熟度の違い、サルの採食行動の違い、果実の他の物性(サイズ、硬度、反射分光特性など)とのより詳細な統計分析を行う。
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Causes of Carryover |
試料の匂い測定法の検討により経費の節減ができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定より果実の測定数を増やし、より多くの試料の分析を行う。
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