2016 Fiscal Year Research-status Report
「米ぬか農法」の雑草防除メカニズムと生物農薬への展開
Project/Area Number |
16K14839
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 眞理 九州大学, 農学研究院, 教授 (60091394)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 勇志 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50611571)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 発芽 / 活性酸素 / 抗酸化物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
米ぬか(主として果皮および糊粉層の成分)農法は、有機肥料としての効用だけでなく、経験的に雑草防除効果が知られている。その作用は、物理的な遮光および嫌気効果と理解されてきたが、その雑草種子発芽抑制メカニズムには未だ不明な点が数多く残されたままである。本研究では、雑草抑制効果の高いとされる黒米の米ぬか成分中に含まれるアントシアニンの機能として、抗酸化能力に着目した。 平成28年度は、米ぬかの濃度、品種により水田雑草の代表種であるヒメタイヌビエの発芽および伸長を調べ、黒米が特に有意に発芽・伸長を抑制することを確認した。また発芽機構の研究でモデル植物としてよく用いられているムギ類を材料に生化学解析を行った。オオムギ種子に吸水処理を行い、発芽率測定後、胚のみをサンプリングし、H2O2含量の測定を行った。遮光処理として暗黒条件を設定し、光条件に比べ、発芽は促進され、吸水処理後の胚内H2O2含量は有意に増大していることを明らかにした。このことから、黒米の米ぬかに含まれるアントシアニンは活性酸素を抑制し、発芽抑制に働くことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、広く栽培されている水稲品種に比べ、黒米から分離した米ぬかは、水田雑草の代表種であるヒメタイヌビエの発芽抑制に有効であることの確認を行うことができた。これまで、米ぬか農法は、物理的な遮光および嫌気効果によると理解されてきたが、米ぬかで水田を完全に遮光することは不可能であることや、水田雑草は嫌気条件下でも発芽・生育可能という特性をもち、その発芽抑制メカニズムは必ずしも解明されていなかった。 そこで、発芽機構の研究でよく用いられ基礎的知見のあるオオムギ種子を材料として用い、暗黒条件下では、発芽が促進され、吸水処理後の胚内H2O2含量は有意に増大していることを明らかにした。このことから、米ぬか農法に特に有効とされている黒米の米ぬかに含まれるアントシアニンがH2O2などの活性酸素を抑制し、発芽抑制に働くことが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
米ぬかによる雑草種子のROSとROS分解酵素として、SOD, CAT, APX, GPX等の含量を調べる。また、水田土壌中の埋蔵種子についても着目し、米ぬかが水田雑草の発芽と伸長に及ぼす影響について、ヒメタイヌビエ以外の水田雑草も対象に調べる予定である。 また、実際に米ぬか農法をする場合に、抗酸化能力の高い米ぬか品種の選定についても検討する。今後、抗酸化物質等の有効成分を用いて水田雑草の発芽試験を行い、吸水時間ごとにRNAを抽出し、cDNA合成後、発芽関連遺伝子についてリアルタイムPCRを用いて発現解析を行う予定である。
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