2016 Fiscal Year Research-status Report
ダイズの炭素-窒素需給バランスに基づく最適ノジュレイションレベルの探索
Project/Area Number |
16K14842
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
松波 寿典 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター 生産基盤研究領域, 研究員 (10506934)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ダイズ / 生物共生機能 / 根粒 / 収量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、様々な大気-土壌栄養環境下(温度、二酸化炭素濃度、窒素条件)におけるダイズ-根粒菌の炭素と窒素の需給関係を定量的に解析し、炭素・窒素需給バランスからみたダイズの乾物生産、収量が最大となる最適ノジュレイションレベル(=最適根粒着生レベル)を明らかにすることを目指す。 平成28年度は、温度勾配型チャンバーを用いて、異なる温度(外気、外気+5℃)と二酸化炭素濃度(外気、外気+200ppm)の条件下においてダイズを生育させ、炭素・窒素の需給バランスを変化させ、ダイズの乾物生産、収量と根粒菌の炭素要求と窒素供給の関係についてノジュレイションレベル(根粒重/根重)に着目して調査した。また、群落レベルでの炭素-窒素需給バランスのモデル化に向けて、モデル構築のための幅広い生育データを得るために異なる播種期の圃場試験を実施した。 温度勾配型チャンバー試験ではノジュレイションレベルが高まると、根粒一粒が大型化する傾向がみられた。また、ノジュレイションレベルの向上に伴いダイズ子実が大型化し、収量が増加する傾向がみられ、ノジュレイションレベルと百粒重の間に密接な関係が認められた。一方、ノジュレイションレベルと乾物生産、収量の間には直接的な相関関係は認められなかった。圃場試験に関してはモデル構築に向けた必要な生育データが取得できた。 これらのことから、ノジュレイションレベルは子実の肥大を介して収量に影響すると考えられた。今後は、ダイズ体内の成分分析を行い、ノジュレイションレベルや子実の肥大、収量との関係について解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では物理的環境要因を変動させることで多様なノジュレイションレベルを試験的に誘発させることで、個体レベルにおける炭素・窒素需給バランスを定量的に解析し、それらと乾物生産、収量の関係からみた最適ノジュレイションレベルを見出すことを一つの課題としている。そこで、平成28年度は温度勾配型チャンバー試験において、温度と二酸化炭素濃度の処理を実施し、幅広いノジュレイションレベルが得られ、ノジュレイションレベルと物質生産形質の関係について明らかにすることができた。ただし、供試サンプルの化学分析は年度内に実施できなかったので、次年度行う予定となっている。 また、定量的に得られた個体レベルの炭素・窒素需給バランスをモデル化し、群落レベルのダイズ-根粒菌共生モデルを構築し、群落レベルにおいて乾物生産、収量が最大化する最適ノジュレイションレベルを明らかにすることも本研究の目的となっている。この点に関して、平成28年度の圃場試験においては当初の予定どおり、必要な生育データが取得できた。 以上のように本研究は、一部年度内に解析が間に合わなかった部分があるが、全体への影響は軽微であり、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の試験では温度と二酸化炭素濃度の処理時期を栄養成長期と生殖成長期の2時期として処理を実施した。しかし、栄養成長期処理サンプルは外気へ戻した場合、生育異常または枯死により健全に生育しなかった。このため、平成28年度は生殖成長期処理のサンプルのみを分析対象としたことから、当初よりもノジュレイションレベルの変異が小さい可能性が考えられた。そこで、次年度は温度処理を3段階(外気、外気+5℃、外気-5℃)に設定することで、ノジュレイションレベルに幅広い変異を誘発させる。 また、定量的に得られた個体レベルの炭素・窒素需給バランスをモデル化し、群落レベルのダイズの生長モデルにこのモデルを組み入れ、ダイズ-根粒菌共生モデルを構築し、群落レベルにおいて乾物生産、収量が最大化する最適ノジュレイションレベルを明らかにすることも本研究の目的となっている。この点に関して、平成28年度の圃場試験においては当初の予定どおり、必要な生育データが取得できたことから、次年度以降も引き続き、播種期を変えた栽培試験の経年的なデータを取得する。
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Causes of Carryover |
平成28年度の試験サンプル処理に関しては粉砕作業のみに留まり、試料の調整が遅れた。このため、化学分析は次年度以降、実施することになり、分析機器のメンテナンス費用、試薬代等が次年度の使用額へと変更となった。また、温度勾配型チャンバーに関しても、共同設備利用の扱いとなり、当初の予定より使用期間が短縮されたことから、その電気代も次年度の使用額へと変更となった。 以上のように、化学分析費用および温度勾配型チャンバーの電気代に係る次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の試験サンプルを分析するための分析機器のメンテナンス費用、試薬代等に使用する。また、温度勾配型チャンバーに関しては、次年度は単独による設備利用の扱いとなるため、次年度使用額として必要となる。
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