2017 Fiscal Year Research-status Report
大気圧プラズマによる植物免疫システム活性化の分子基盤と病害防除への応用
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16K14858
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 英樹 東北大学, 農学研究科, 教授 (20197164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 俊郎 東北大学, 工学研究科, 教授 (30312599)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大気圧プラズマ / タバコモザイクウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
プラズマは一般に気体が電離した状態のものを指し、工学、医学、農学などの幅広い分野に応用可能な新技術として注目されている。プラズマの一つである大気圧プラズマは、室温状態で反応性の高いラジカルなどの活性種を生成することから、農産物への照射により、品質に影響を与えることなく、表面の微生物(糸状菌や細菌)を殺菌して貯蔵性を高めるなど、食品分野への利用が注目されている。本課題では、大気圧プラズマがウイルスに対して及ぼす影響を解析した。大気圧プラズマを、タバコモザイクウイルス(TMV)懸濁液に照射したのち、N遺伝子をもつタバコ品種に接種したところ、照射時間依存的にウイルス感染による局部壊死病斑の形成が認められなくなった。同時に、コントロールとして、大気圧プラズマ非照射のTMV懸濁液を同様にN遺伝子タバコ品種に接種ところ、ウイルス感染による局部壊死病斑の形成が認められたことから、大気圧プラズマをTMV懸濁液に照射することにより、TMVの感染性が低下することが明らかになった。大気圧プラズマ照射後のTMV粒子を電子顕微鏡で観察したところ、照射時間依存的にウイルス粒子の崩壊が観察された。また、大気圧プラズマ照射後のTMV懸濁液からTMV RNAを抽出し、電気泳動で確認したところ、照射時間依存的にTMV RNAの分解が認められた。以上より、大気圧プラズマ照射により、TMVに粒子構造の崩壊とTMV RNAゲノムの分解が促進されたことにより、感染性が喪失したものと考えられた。大気圧プラズマは、TMVを不活化する効果があることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大気圧プラズマは、TMVを不活化する効果があることが示された。また、TMVの不活化は、粒子構造の崩壊と、TMV RNAゲノムの分解に起因することを明らかにした。これらは新規な知見であり、現在、論文を投稿中である(minor revisionにて再投稿中)。したがって、おおむね順調に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
大気圧プラズマは、室温状態で反応性の高いラジカルなどの活性種を生成することが明らかになっているが、実際に、大気圧プラズマを照射したTMV懸濁液において、どうのような活性種が生成されているのかは、明らかになっていない。生成される活性種は、TMV粒子構造の崩壊とTMV RNAゲノムの分解に寄与していると推察されることから、生成される活性種を具体的に明らかにし、大気圧プラズマによるTMV不活化のメカニズムを解明する。
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Causes of Carryover |
大気圧プラズマを照射したTMV懸濁液に生成する活性種の測定には、基質試薬の購入が必要である。また、投稿中の論文が受理される見通しであることから、論文掲載料としての支出が見込まれる。
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Research Products
(1 results)