2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14862
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
大島 一里 佐賀大学, 農学部, 教授 (00176869)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ウイルス / 共進化 / 分子進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然界では,病原体が一個体の植物に単独感染より混合感染がしていることが多い。ウイルスの混合感染では一般的に,異種ウイルスとの混合感染により強い症状を示し,同種ウイルスの異なる系統の混合感染により干渉作用が関与して弱い症状を示す。これらの現象に着目し,異なる2種ウイルス以上が混合感染した多くのアブラナ科植物やユリ科を採集してきた。それらの一部から2種のウイルスを分離後,両ウイルスゲノムを調査したところ「共進化」特有の塩基変異を見出したことから,未だ知られていない病原体間の「共進化」機構を解明することを目的として研究を遂行している。世界中の圃場よりカブモザイクウイルス(TuMV)とキュウリモザイクウイルス(CMV)の混合感染植物を240分離株以上を採集し,それら感染植物の植物汁液をキノアに接種し,準種を均一にするために最低3回の単病斑分離を繰り返し局部病斑を作らせ,両ウイルスを純粋にしてきた。既に各ウイルス70分離株については,共通宿主であるNicotiana benthamianaを用いて増殖させウイルスゲノムの全塩基配列をこれまで決定してきた。なお,TuMVは一本鎖RNAで約9,800塩基,CMVはRNA1,RNA2およびRNA3の分節ゲノムRNAで約8,100塩基である。 そこで平成28年度においては地理的あるいは進化的に考慮した残りの分離株について,ゲノムの全塩基配列を決定すると共に,ゲノムインフォマティクスを用いて病原体の「共進化」関係の再探査を開始した。具体的には,30分離株の各TuMVとCMVゲノムの全塩基配列の決定を行い,現在,ゲノムインフォマティクスによる継続的な探査を行った。さらに多くのウイルスが混合感染して共進化していると思われるユリ科植物のウイルスについてもウイルスゲノムの塩基配列を決定し,共進化機構についても考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度においては地理的あるいは進化的に考慮した残りの分離株について,ゲノムの全塩基配列を決定すると共に,ゲノムインフォマティクスを用いて病原体の「共進化」関係の再探査を開始した。具体的には,30分離株の各TuMVとCMVゲノムの全塩基配列の決定を行い,現在ゲノムインフォマティクスによる継続的な探査を行っている。さらに多くのウイルスが混合感染して共進化していると思われるユリ科植物のウイルスについてもウイルスゲノムの塩基配列を決定し,共進化機構についても考察した。以上から当初の計画の予定通り研究は遂行していると思われ,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ウイルスが混合感染している多くの植物体を既に世界各国から採集しており,混合感染している異種の2種のウイルスを同じ個体から分離し多数のゲノム構造を決定していることから,未だ検討されていない病原体間(ウイルス種間)の「共進化」の現象と機構について検証する。具体的には,最新のゲノムインフォマティクスを用いて解析し,単独感染ウイルスと混合感染ウイルス間とのゲノム変異の違い,宿主とのフィットネスによる変異の違い,ウイルスの進化速度や系統樹での分岐年代などの違いを調査し,ゲノム上に現れてくる「共進化」現象を解明する。特有の変異を統計的に確かなものにするために,最新のゲノムインフォマティクスにより様々な角度から,両ウイルスゲノム間の変異の特性や宿主とのフィットネスによるゲノム変異の違い,そしてウイルスの進化速度などについて病原体間の「共進化」という視点でその機構を考察する。さらに強「共進化」してきたウイルス株を選抜し特徴を把握後,ウイルス病防除の基盤を探る。 平成29年度以降の主な推進の方策としては28年度の進行状況から,継続してウイルスの採集,そしてゲノムの塩基配列の決定を行い,ゲノムインフォマティクスによる共進化に関係する変異,進化速度そして拡散方向について継続して探査を行う。また 強「共進化」してきたウイルス株を選抜し,その特徴を明らかにする。それぞれの分離株について共通宿主であるダイコン並びにアブラナ属のアブラナ科植物での症状を温室内で調査し,症状や伝搬性の関係などについても比較検討する。最終的には,「共進化」機構について病理学的立場から総合考察し,投稿論文の作成する。
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Research Products
(2 results)