2016 Fiscal Year Research-status Report
分子標的剤を利用した病原細菌の三型分泌装置形成の制御機構の解明と新規農薬の開発
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16K14863
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
川崎 努 近畿大学, 農学部, 教授 (90283936)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 植物免疫 / エフェクター / 分子標的剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
病原菌は、植物への侵入に伴って、植物の細胞内にエフェクターと呼ばれる分子を分泌し、植物の免疫応答を強く阻害することで、自身の感染環境を整えている。病原細菌においては、エフェクターを分泌する三型分泌装置の形成が、感染成立の鍵となっているが、その形成を誘導する分子機構はあまり理解されていない。そこで、本研究では、三型分泌装置の形成因子の遺伝子発現をモニターすることが出来る実験系を構築し、イメージングにより植物体内での病原細菌の三型分泌装置の形成様式を時空間的に解析するとともに、三型分泌装置の形成過程を阻害する分子標的剤の単離を目指して研究を進めている。イネの重要病害の一つである白葉枯病菌の三型分泌装置形成に関わる遺伝子HrcUのプロモーターを単離し、その制御下で、レポーターとしてGUSを発現する遺伝子を構築し、白葉枯病菌に導入した。得られた白葉枯病菌は、三型分泌装置の誘導培地上において、GUS活性および染色が検出され、本菌株を用いて三型分泌装置の形成がモニターできることがわかった。本菌をイネに接種すると、GUS染色はイネの維管束に沿って検出され、白葉枯病菌が維管束でエフェクターを発現していると考えられた。本菌を用いて、分子標的剤をスクリーニングするための実験系を構築し、358種の放線菌の抽出物を処理したところ、そのうち、75%以上のGUSの発現を阻害するものが37種見つかった。今後、これらの候補について詳細な解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに、三型分泌装置の形成因子の遺伝子発現をモニターする実験系を構築することができた。さらに、レポーターとして用いたGUSの活性を測定するため、様々な基質やバッファーを調べ、分子標的剤のスクリーニングに最適な条件を構築することに成功した。本実験系を用いて、分子標的剤のスクリーニングを開始し、候補となる放線菌の抽出物を得ており、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、三型分泌装置形成を阻害する分子標的剤のスクリーニングを行うための実験系を構築し、すでに候補となる多くの放線菌由来の抽出物を得ている。今後、さらにこれらの抽出物を分画し、分子標的剤の同定を進めていく。また、トマト斑点細菌のHrpLプロモーターを用いた実験系の構築を行い、得られた分子標的剤が異なる病原細菌にも効果があるかどうかを検証する。さらに、現在、レポーターとしてGUSを用いているが、GFPを使用したコンストラクトを作製して、三型分泌装置の形成遺伝子の発現時期や発現場所などを時空間的に解析する。
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