2017 Fiscal Year Research-status Report
ウリミバエ不妊虫による繁殖干渉を利用した近縁な侵入害虫ナスミバエの防除技術の開発
Project/Area Number |
16K14864
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
本間 淳 琉球大学, 農学部, 協力研究員 (90527897)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 不妊虫放飼法 / 繁殖干渉 / 害虫防除 / ミバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、検疫害虫であるミバエ類を材料として、近縁種による繁殖干渉を利用して侵入害虫を防除・根絶する、全く新しい技術の開発を目指すものである。繁殖干渉は、主に近縁他種による誤った配偶行動を受けることにより適応度が低下する現象を指し、代表的な負の種間関係である資源競争に比べて、相手種の絶滅を容易に、かつ速やかに引き起こしうることが知られている。一方、世界的に重要な検疫害虫・衛生害虫の根絶手法として、大量に人工増殖した虫を不妊化して放飼し、野生虫の繁殖を阻害して根絶させるという不妊虫放飼法という方法があり、この技術によって日本では、南西諸島におけるウリミバエの根絶に成功している。しかしこの方法は、非常に大規模な増殖施設を必要とし、対象虫の根絶後も侵入警戒のために不妊虫放飼を継続する必要があることから、新たに侵入してくる害虫に対して次々に適用することは不可能である。本研究課題は、この繁殖干渉と不妊虫放飼が理論的には同じものであることに注目し、放飼不妊虫の繁殖干渉によって、対象となる同種野生個体のみならず、近縁な害虫種をも防除する技術の開発を目指すものである。本研究課題では、まず不妊虫による繁殖干渉によって近縁種の根絶が可能であるのかについて理論的な検討を行った。これは同種個体間(不妊虫と野生虫)の配偶行動を利用する不妊虫放飼に比べ、近縁他種間の「間違った」配偶行動を利用する繁殖干渉は、対象種の増殖率を抑える効果が大きく劣ると考えられたためである。しかし理論的検討の結果、繁殖干渉の効果がごく弱い場合でも、野生虫密度の10倍の不妊虫を放飼することができれば根絶が可能であることが分かった。野生虫密度の10倍というのは、沖縄県におけるウリミバエ根絶事業において目安とされていた数であるため、不妊虫の繁殖干渉による根絶は実現可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の平成29年度における計画は、(1)不妊虫による繁殖干渉によって害虫密度の抑圧・根絶が可能であるかを理論的に検討結果に関する論文を作成すること、および(2)ウリミバエとナスミバエを用いた室内実験により、両者間の繁殖干渉の強さを明らかにすること、(3)不妊虫放飼による害虫根絶をリアルタイムにモニタリングする統計モデルの作成であった。(1)については、論文はほぼ完成しまもなく投稿できる段階まで来ている。(2)については、以前から 研究上の交流がある台湾の研究者との協力体制を築くことができた。(3)についてはモデルの大枠はほぼ作成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成30年度は、(1)不妊虫の繁殖干渉による害虫密度の抑圧・根絶に関する理論的検討については、早い段階での論文出版を行う。(2) ミバエ間の繁殖干渉に関する実験については、台湾での実験を遂行し、結果をまとめる。(3)不妊虫放飼による害虫根絶をリアルタイムにモニタリングする統計モデルは、これを完成させて論文を執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
台湾研究者と協力して、台湾で行うことにしていた実験の予定がずれたため、旅費および人件費の執行額が予定額よりも大きく減少した。次年度はこの実験を遂行することでこれを使用する。
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Research Products
(4 results)