2016 Fiscal Year Research-status Report
ミカンキジラミに特異的な寄生菌の植物内生菌機能に基づくカンキツグリーニング病防除
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16K14866
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Research Institution | Nishinippon Junior College |
Principal Investigator |
清水 進 西日本短期大学, 緑地環境学科, 特任教授 (20187454)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カンキツグリーニング病 / ミカンキジラミ / 寄生菌 / 植物内生菌 / 防除 |
Outline of Annual Research Achievements |
キジラミ類に媒介されるカンキツグリーニング病(Citrus huanglongbing, HLB)はアジア・アフリカの熱帯・亜 熱帯地域におけるカンキツ類の最も恐ろしい病害で、最近では南北アメリカ大陸にも被害 が拡大している。わが国では1988年に西表島で、現在では沖縄県のほぼ全域と鹿児島県の一部で確認されている。温暖化によりミカンキジラミが分布域をさらに拡大した場合、沖縄県のみならず日本各地のカンキツ類の生産に深刻な影響を及ぼす可能性が高い。ミカンキジラミに特異的で、しかも極めて強い病原性を示すIsaria japonicaを分離した。そのI.japonicaの性状を調査し、植物内生菌機能を発揮させる新しい防除法の確立を目的とする。 28年度は罹病虫からのI.japonicaの分離法を確立し、葉上での動態と植物内生菌機能を調査した。葉上での発育が認められI.japonicaの内生菌として認められた。次に、I.japonicaを柑橘類の葉上に散布後、成虫を放飼して、葉上からの感染を試みた結果、低い濃度での高い死亡率が認められた。葉上接種と直接接種を比較した場合、葉上接種区では死亡するまでに長時間を要したが、両者において各濃度の死亡率には大差が認められなかった。 また、トベラキジラミに対する病原性を調査した結果、病原性が認められた。各種キジラミに対する病原性調査ではイタドリマダラキジラミとミカンキジラミに対して極めて強い病原性を示したが、トベラキジラミおよびクワキジラミに対しては中程度の病原性を示した。キジラミ以外ではモモアカアブラムシ、ハダニ、ミナミキイロアザミウマなどにび病原性が認められ、適用昆虫の幅が拡大された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
28年度は罹病虫からのI.japonicaの分離法を確立し、葉上での動態と植物内生菌機能を調査した。葉上での発育が認められI.japonicaの内生菌として認められた。また、トベラキジラミおよびイタドリマダラキジラミなどに対する病原性を調査した結果、病原性が認められた。 さらに、各種昆虫(モモアカアブラムシ、ハダニ、ミナミキイロアザミウマなど)に対する病原性も確認された。これら昆虫の寄生植物葉上におけるI.japonicaの動態の予備調査を行った結果、これら植物でも内生菌機能の発現がある可能性が示唆された。 以上の結果からおおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
I.japonicaの植物葉上での動態調査と植物内生菌機能より、ミカンキジラミに対する新しい微生物的防除理論と基盤を確立する。 前年において葉への接種方法および葉上での動態調査法が確立した。また、適用害虫の幅が拡大されたことより、各種植物葉上での動態を綿密に調査するとともに、柑橘類以外の植物における内生菌機能も併せて調査する。とくに、ナス科、イネ科およびマメ科植物に成長促進機能も追及する予定である。 得られた試験結果、生物多様性条約、外来性微生物の生態系への影響ならびに国内事情を考慮し、実用化の可能性を決定する。また2年間の実験をまとめて報告書を作製するとともに学術誌に発表する。
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