2017 Fiscal Year Research-status Report
寄主植物依存的な交尾選好性の変化を利用したゴマダラカミキリ防除に関する研究
Project/Area Number |
16K14867
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
辻井 直 (藤原直) 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 主任研究員 (40568440)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安居 拓恵 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 上級研究員 (80414952)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 忌避物質 / ゴマダラカミキリ / 交尾行動 / 生理活性物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゴマダラカミキリは、幼虫時にカンキツ類などの各種永年作物の幹を食害し枯死させる重要害虫であると同時に、世界的にも侵略的害虫として知られている。本種に対し有効な防除法はいまだみつかっていない。 これまでの研究により、温州ミカン枝を餌としたメス個体がそれ以外の植物(ヤナギの一種)を餌とするオスに強く忌避されるという現象を見出し、その現象がミカン枝の摂食時にミカン枝から放出される揮発性物質、βーエレメンであることを明らかにした。 昨年度までは、メスと同程度の大きさの黒いガラス玉を用いた活性の検証・活性物質の同定をおこなってきた。本年度は、実際の野外における実用化を想定し、ミカン枝およびヤナギ枝で飼育したメス・オスを用いた実験をおこなった。小型ケージ内に同じ、もしくは異なる植物を餌として飼育したオスメス各1個体を導入した。はじめに接触した際の行動を観察したところ、同じ餌を摂食していた組み合わせでは高い確率で交尾行動が確認された。ミカン枝を摂食していたオスがヤナギ枝を摂食していたメスを全く忌避しなかったのに対し、ヤナギ枝を摂食していたオスはミカン枝を摂食していたメスを半数以上が忌避し、その後3度目までの接触を観察しても忌避し続けた。野外において、一度忌避行動を示すことは同じ木からの離脱(飛び立つもしくは落ちる)を意味し、再度同じメスに遭遇することはほぼないことが予想される。この結果より、ミカン以外を寄主とするオスが示す忌避行動が虫対虫においても高い割合で生じることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
活性物質の同定および小規模スケールでの忌避効果の確認を完了し、計画はおおむね順調である。行動実験に用いる野外虫の確保については、採集しているカンキツ園の廃園等先行きが不透明な点が引き続き残されている状況であるため、最大限の努力が必要となる。今後の実験については、野外虫およびその餌となる植物材料(カンキツ枝およびヤナギ枝)の確保がポイントとなるため、新たな採集場所の開拓等をおこないるる研究を推進する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
メス個体がミカン枝を摂食することによる忌避効果を引き起こす要因が同定され(βーエレメン)、その効果が小規模スケールにおいて虫同士においても確認できたことを受け、さらにスケールアップした実験を計画している。小規模網室内や網掛けした植物等を用い、βーエレメンに対する忌避効果を確認する実験をおこなう。 また、小規模スケールにおける実験成果の論文化をおこなう予定である。
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Causes of Carryover |
計画より順調に野外虫の採集ができたため、出張の回数が想定より少なく済んだ。学会参加のための旅費が国内であったため、あまりかからなかった。次年度使用額は投稿予定論文のオープンアクセス化および野外虫確保のための採集旅費に充てる。
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