2016 Fiscal Year Research-status Report
水稲根圏のメタン動態:アイソトポローグ解析による生成・酸化の分離定量
Project/Area Number |
16K14875
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
常田 岳志 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター 物質循環研究領域, 主任研究員 (20585856)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西脇 淳子 茨城大学, 農学部, 助教 (00549892)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メタン / メタン酸化 / 安定同位体 / 水田 / イネ |
Outline of Annual Research Achievements |
水田は世界人口の半数に主食のコメを提供する主要な食料生産基地である一方、強力な温室効果ガスであるメタンの大きな発生源でもある。水田からのメタン発生量は、水稲の根圏で生じるメタンの「生成」と「酸化」(分解)の差し引きで決まるが、これまでは両者を区別して定量することは難しかった。本研究は、メタンの水素・炭素同位体分子種の反応性の違いを利用してメタン酸化を定量する新規手法「アイソトポローグ法」を確立することを目的としている。 初年度は、改良阻害剤法を用いたメタン酸化量・酸化率およびメタン酸化に伴う同位体分別の実測を重点的に行った。具体的にはメタン酸化をストップさせた阻害区からの発生量(=生成量)を求め、別途用意したコントロール区(阻害剤無し)からの発生量(生成量ー酸化量)と合わせてメタン酸化量および酸化率を求めた。さらに阻害区とコントロール区から発生したメタンの同位体比の差から酸化に伴う同位体分別を求めた。これらの測定を、メタン発生量が異なる二つの品種および二つの窒素条件下で行った。その結果、実圃場においても生成されたメタンの一部は酸化分解されてることが確認された一方、メタン酸化が生じていても炭素に関しては同位体分別が生じていなかった。これは大きな分別が観測されてきた培養実験に基づくこれまでの知見とは異なる結果であり、既存の同位体分別係数を実際の圃場条件下にそのまま適用することは難しいことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
改良阻害剤法を用いた圃場試験によるメタン酸化率の実測は当初の予定以上に進んだ。特に実際の水田圃場において、メタン酸化と炭素同位体比に関して精度の高いデータを取得し、既存の知見を覆す結果が得られたことは予想以上の進展であった。一方で当初予定したメタンの水素安定同位体比測定ラインの構築は未達成であった。今後は他の機関と連携し水素安定同位体比を測定する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
圃場試験でよるサンプル採取およびメタンの炭素安定同位体比測定に関しては、想定以上に研究が進展している。一方でメタンの水素安定同位体比測定ラインを自前で構築することは、研究リソース上、困難であることが明らかとなった。したがって今後は炭素に関しては研究代表者が自前で分析する一方、水素安定同位体比に関しては外部の機関と連携して分析を進めるよう研究計画を一部変更する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた水素安定同位体比の測定を次年度に回したため、ライン整備や分析に関わる消耗品およびオペレーター経費に残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は主に同位体比分析に必要な経費(消耗品、オペレーター経費)に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)