2016 Fiscal Year Research-status Report
新たな微生物生育因子、コプロポルフィリン-亜鉛錯体の機能と生理作用
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16K14876
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
重冨 顕吾 北海道大学, 農学研究院, 講師 (20547202)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Leucobacter / Growth factor / Heme synthesis / Sphingopyxis / Symbiosis / Zincphyrin |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は先ず研究計画における第一課題、[1] 中心金属である亜鉛は必要十分な要素か?について検討を行った。市販のコプロポルフィリンⅠならびにⅢより、Fe、Zn、Ni、Co、Cu、Mg錯体の形成を行った。検討の結果、Zn錯体形成は室温条件においても容易に進行する一方、その他の多くの金属は100℃の加温条件でしかポルフィリン環へ導入されないことが解った。次いで調製した錯体の生育促進活性評価を行った。ASN212はフロックを形成するため濁度による活性評価が困難であったため、新たにCellTiterGloによる活性評価法を導入した。評価の結果、FeならびにZnでは濃度依存的な生育促進活性が認められたのに対し、他の金属では活性が認められなかった。また、いずれの錯体においてもコプロポルフィリンⅢ錯体が強い活性を示した。以上の実験結果から、ジンクフィリンは呼吸鎖に必要なヘム前駆体としてLeucobacter sp. ASN212株の生育を可能にしているのではないかと作業仮説を立てた。次いで研究計画の第二課題である[2]ZnCpはどのようにASN212株の生育を刺激しているか?について検討を行うため、ASN212株のゲノム情報からヘム生合成遺伝子の解析を行った。ASN212株が属するアクチノバクテリアはプロテオバクテリアとは異なるヘム生合成経路を保有しているためこの点に注目し探索したところ、アッセンブルしたゲノム中ではhemb、hemcならびにhemeといった一部のコプロポルフィリン生合成遺伝子が認められなかった。これらの遺伝子はLeucobacter komagatae中では近傍の領域にクラスター様に存在しているため、ASN212においてこの領域が欠損している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジンクフィリンの構造必要性やその作用メカニズムの解明は当初の計画通り進行している。一方、当初、ジンクフィリンに標的分子が存在する可能性を考慮し、標的分子の探索を計画に含めていたが、ジンクフィリンがシグナル物質というよりも、ヘム前駆体である可能性が高まったため、方針を変更しプローブの作成は行わなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子解析の結果、一部の遺伝子欠損の可能性が示唆されたが、果たして実際にこの機能が「無い」のかついては立証が困難である。このため、酵素によりコプロポルフィリン以前の前駆体を調製・投与することでこの立証を進めていく。また、検討課題としていたジンクフィリンの生育促進活性における普遍性に関する検証を進めていく。
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