2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K14890
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
園元 謙二 九州大学, 農学研究院, 教授 (10154717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 幸博 東北大学, 農学研究科, 准教授 (70280576)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | デザインドバイオマス / バイオブタノール / 混合糖 / カタボライト抑制(CCR) / CCR回避機構 / 育種イネ / セルラーゼ / 糖化性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.混合糖を用いたブタノール発酵におけるカタボライト抑制(CCR)機構の解明:先ず、CCR条件(グルコースとキシロースから成る混合糖、GX混合糖)と非CCR条件(セロビオースとキシロースから成る混合糖、CX混合糖)のキシロース代謝の初発酵素Xylose isomeraseの活性は、後者が約3倍高いことを見いだした。グラム陽性細菌のCCRでは、GX混合糖の場合、Phosphotransferase system(PTS)がグルコース輸送時にグルコースをリン酸化し、Histidine-containing protein kinase(HPrK)によるHPrのリン酸化を誘起し、リン酸化HPrがCatabolite control protein A(CcpA)と複合体を形成してキシロース代謝に関わる酵素遺伝子の転写調節を行うことが報告されている。また、リン酸化HPrがキシロースの輸送を阻害することもある。本発酵では転写解析の結果、CX混合糖でのCCR回避機構では、セロビオースの非PTS系輸送体であるパーミアーゼと菌体内β-グルコシダーゼを介したバイパス経路の利用、そしてCCRのキー酵素遺伝子hprKの発現抑制が重要な要因であった。
2.発酵プロセス適応型イネの育種:独立の形質転換体の数が少なかった老化誘導プロモーターでendo-glucanaseを発現するイネを新たに作出し、採種した。また、cellobiohydrolaseとendo-glucanaseの融合タンパク質(ハイブリッドセルラーゼ)を発現するイネも作出した。ハイブリッドセルラーゼ発現イネの糖化性を調べたところ、糖化性の向上は見られず、両セルラーゼを融合させた結果、活性が大きく低下したことが考えられた。N末端とC末端を入れ替えたハイブリドセルラーゼ発現イネも作出しており、今後はこれらのイネの糖化性を測定していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書の作成段階で、予想される問題点を明確にしていたことと、数値目標を定め多方面からの検討を柔軟に行ったことが順調に進展する結果となった。また、研究代表者と分担者が互いの専門領域で柔軟に対処したことも大きな要因と言える。しかし、本研究は3つの研究項目、①混合糖を用いたカタボライト抑制(CCR)がかからない高効率ブタノール発酵(発酵工学)、②CCR 機構の解明および高収率・非CCR 菌株の育種(分子微生物学)、③発酵プロセス適応型イネの育種(植物育種学)、に絞り、専門分野が異なる研究者が連携して並行複式型研究(分野をまたぐフィードフォワードとフィードバック)を行っているため、各研究項目ですれが生じている部分がある。その点を次年度の研究計画に反映したい(次項の「12.今後の研究の推進方策」を参照してほしい)。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究項目「②CCR 機構の解明」(分子微生物学)が完遂したので、次年度(最終年度)の研究計画を下記のように行う予定である。
①稲ワラを用いたカタボライト抑制(CCR)がかからない高効率ブタノール発酵(発酵工学):通常のイネおよび③で育種されたイネの稲ワラを用いて、CCRが回避できるような稲ワラの前処理・糖化を考案する。そして、その糖化液を使用して回分発酵法、流加発酵法、同時糖化発酵法を検討し、高効率発酵プロセスの開発を目指す。評価方法として、前処理・糖化・発酵の全てのプロセスを網羅するパラメーターを提示する。また、本結果を植物育種学分野(③)へフィードバックする。
③糖化酵素過剰発現イネの育種・糖化効率の検討および発酵プロセス適応型イネの育種(植物育種学):前年度までに作出した老化誘導プロモーターでcellobiohydrolase、endo-glucanase、ハイブリッドセルラーゼをそれぞれ発現するイネの稲わらの老化前(出穂日)と老化後(収穫期)の糖化性を測定する。稲わらは、葉身、葉鞘、茎で糖化性が大きく異なるので、それぞれに分けて糖化性を測定する。
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Causes of Carryover |
相乗り分析等が生じたため、物品費が減少し繰越金が発生した。その繰越金は次年度の物品費などに有効活用する予定である。
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