2016 Fiscal Year Research-status Report
金属鉄を唯一のエネルギー源として生育する鉄腐食・酢酸生成菌の代謝機構の解明
Project/Area Number |
16K14895
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
加藤 創一郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (30597787)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 微生物 / 鉄腐食 / 酢酸生成菌 / ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は以前の研究において、固体である金属鉄中の自由電子を唯一のエネルギー源とし、二酸化炭素から酢酸を生成することで生育可能な新規微生物を単離し、この代謝が無酸素環境下での鉄の腐食(いわゆる“さび”)を促進することを発見した。しかしこの微生物がいかにして細胞の外にある金属鉄から電子を受け取っているのか、その分子機構は不明である。本研究は我々が単離した鉄腐食・酢酸生成細菌を対象として、近縁種との比較ゲノム解析、網羅的遺伝子発現解析、電気化学的解析、変異株の作製を通して、金属鉄との電子授受に基づくエネルギー代謝の分子機構を解明することを目的とする。 平成28年度はまず我々が単離した鉄腐食・酢酸生成細菌(Sporomusa sp. GT1株)とその近縁の酢酸生成細菌群について、金属鉄中を唯一のエネルギー源とした培養実験をおこなった。その結果、明確な鉄腐食活性を示したのはSporomusa sp. GT1株とSporomusa sphaeroidesのみであり、Sporomusa ovataおよびいくつかのAcetobacterium属、Moorella属の酢酸生成菌では明確な活性がみられなかった。 次に鉄腐食能を持つ酢酸生成細菌Sporomusa sp. GT1株とSporomusa sphaeroidesについて、ゲノムDNAを調整し、HiSeq法によるホールゲノムシークエンス解析をおこなった。得られたデータから配列のアセンブリ、ORF同定をおこない、総コンティグ数が100前後、カバレージが95%以上のゲノムデータを得ることができた。現在、すでにゲノム解析が完了している鉄腐食能を持たない酢酸生成細菌(Sporomusa ovata、Acetobacterium woodiiなど)のゲノムデータも加え、比較ゲノム解析による鉄腐食関連遺伝子の探索が進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では平成28年度中に酢酸生成細菌の比較ゲノム解析を完了し、網羅的遺伝子発現解析を進める予定であった。しかしゲノム解析に予想以上に時間を要したため、多少の遅れが生じている。しかし現在すでに網羅的遺伝子発現解析の準備がすでに整っているため、平成29年度中にその遅れを取り戻すことは可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は酢酸生成細菌の比較ゲノム解析をさらに進行させ鉄腐食関連遺伝子の候補を絞り込むとともに、網羅的遺伝子発現解析によりその候補遺伝子、ならびにその他の遺伝子について、鉄腐食への関与の推定をおこなう。さらに進行状況に応じ、鉄腐食性/非腐食性の酢酸生成細菌の電気化学的分析、鉄腐食関連遺伝子候補の遺伝子破壊株の作製、などを進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初の予定通りに研究が進捗せず、予定していた消耗品費、および外注分析費の使用を翌年度に回すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、網羅的遺伝子発現解析をおこなうのに必要な分子生物学試薬等の消耗品、およびRNAの網羅的配列解析の外注分析費等に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)