2016 Fiscal Year Research-status Report
酵母に唯一つの目的タンパク質のみを生産させる技術開発
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16K14906
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山口 良弘 大阪市立大学, 複合先端研究機構, 特任准教授(テニュアトラック) (00737009)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | SPP system / MazF / Saccharomyces cerevisiae |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、真核生物である酵母で目的タンパク質のみの発現を可能にする yeast SPP system確立のために (1)大腸菌の mazF 遺伝子を酵母で厳密に発現制御可能な mazF 発現ベクター(2)低温で目的タンパク質を高発現できる目的タンパク質発現ベクター、の2つの発現ベクターを構築し、 yeast SPP のプロトタイプを確立することを目的としている。MazF は非常に毒性の強いタンパク質である。そこで、テトラサイクリン誘導性プロモーターで MazF の発現が制御可能な pCM251-mazF(大腸菌 MazF-ec)の構築を行った。構築した pCM251-mazFを用いてS. cerevisiae を形質転換し、MazF 誘導後の生育速度を解析した。その結果、MazF によって生育は完全には阻害されなかった。そこで、より強力なプロモーターであるガラクトース誘導性プロモーターを有するプラスミドに mazF をクローニングした。その結果、MazF による酵母での毒性を確認することができた。さらに、より毒性の強い mqsR のクローニングも行い、MqsR 発現後に酵母の生育が阻害されることも見出した。 目的タンパク質を高発現するために、ガラクトース誘導性プロモーターを有する pYES2 (Invitrogen) を用いた。pYES2 ベクターにはプロモーター領域に2個、5’-UTRに1個、転写終結領域に3個の ACA が存在する。これらの ACA を、Primestar mutagenesis kit を用いて塩基置換を行い、ACA-less pYES2 (pYES2 sp) を構築した。その後、目的タンパク質としてエオタキシンおよび検出の容易なGFPをクローニングした。これら目的タンパク質の遺伝子は酵母発現に最適化したコドンでACA-less のものを合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、mazF および目的タンパク質の構築を行った。mazF 発現ベクターに関しては、テトラサイクリン誘導性プラスミドに組み込んだが、毒性を酵母で確認することができなかった。そこで、より強力なプロモーターであるガラクトースプロモーターで mazF を発現可能なベクターを構築した。このベクターを用いた結果、酵母で MazF による生育阻害を確認できた。また、MazF では十分に生育を阻害できない可能性を考え、GCU 配列特異的な RNA 分解酵素である MqsR を用いて同様の実験を行った。 目的タンパク質の発現ベクターとして pYES vector を使用しエオタキシンおよび GFP をそれぞれ挿入した。使用した遺伝子およびベクターの 5'- および 3'-UTR からは ACA をすべて取り除き、 MazF による分解を受けない RNA として発現可能な配列に変更した。現在これらのベクターを使用して酵母での SPP system のプロトタイプを確立中である。
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Strategy for Future Research Activity |
システムの根幹と成る目的タンパク質の発現系を構築する。対数増殖期中期に培養液を急冷し、コールドショックを酵母に与える。低温順化をさせた後にガラクトースを添加し、低温下でMazF および目的タンパク質を誘導する。目的タンパク質合成パターンを35S-メチオニンを用いたパルスラベルにより解析する。添加するガラクトースの濃度、培養温度、培地組成などを調節し yeast SPP system を構築する。MazF では十分に RNA を切断できない場合はより強い活性を有する MqsR を使用する。 もし、SPP system の構築に手間取った場合は、アポトーシスが誘導されていないか確認する。Mammalian cell では、MazF による RNA の分解によってアポトーシスが誘導される。そこで、酵母でも RNA 分解によってアポトーシスが誘導されるか確認する。MazF 誘導後アポトーシスの指標である DNA 断裂、細胞膜の反転などを測定する。もし、MazF がアポトーシスを誘導する場合、その経路を解析し関連遺伝子の欠損させることで、MazF によってアポトーシスが誘導されない酵母を作成する。時間が許せば、yeast SPP system で発現させたタンパク質の構造解析を行う。得られた構造を従来の方法で得られた構造と比較し、yeast SPP system の品質を評価する。
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