2016 Fiscal Year Research-status Report
青色光受容体の改変による紅色光合成細菌の走光性の創出
Project/Area Number |
16K14907
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
浅井 智広 立命館大学, 生命科学部, 助教 (70706564)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 走光性 / 鞭毛モーター / LOV / CheA / ヒスチジンキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、ヒスチジンキナーゼ活性をもつ青色光受容体の改変により、細菌の鞭毛の回転を光で制御できる光受容体を創出することを主な目的としている。その改変型青色光受容体の異種発現により、紅色光合成細菌に人工的に走光性の付与し、光源に向かう正の走光性をもち、光合成を行いながらも恒常的に遊泳し続ける紅色光合成細菌の作製を目指している。 平成28年度は、青色光受容体タンパク質であるLOVタンパク質と鞭毛モーターの回転を制御するヒスチジンキナーゼであるCheAのキメラタンパク質の作製を進めた。青色光受容体ドメインとして、クラスIヒスチジンキナーゼに分類されるLOV-HKのLOVドメインを使用し、多量体構造および光変換の反応サイクルのキネティクスが異なるものを選定した。具体的には、既に他のクラスIヒスチジンキナーゼとのキメラ化の成功例があるBacillus subtilisのYtvAと、単量体で機能することが報告されているErythrobacter litoralisのEL346のLOVドメインを使用した。一方、CheAはクラスIIヒスチジンキナーゼであり、LOV-HKとはドメイン構造が大きく異なるが、リン酸基転移ドメインであるP1-P2ドメインを切り離し、P3-P5ドメインをCheAの触媒ドメインとして融合方法を検討した。候補となるアミノ酸配列について人工遺伝子を化学合成し、大腸菌での発現を試みたところ、発色団であるフラビンを結合した融合タンパク質の過剰発現と大量精製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の初年度である平成28年度は、青色光受容体タンパク質であるLOVタンパク質と鞭毛モーターの回転を制御するヒスチジンキナーゼであるCheAのキメラタンパク質の作製を計画していた。クラスIヒスチジンキナーゼに分類されるLOV-HKのLOVドメインと、クラスIIヒスチジンキナーゼに分類されるCheAのキナーゼドメイン(P3-P5ドメイン)の融合を試み、複数種類のLOVドメインについて、発色団であるフラビンを結合した融合タンパク質の大腸菌での過剰発現と大量精製に成功した。光依存的なヒスチジンキナーゼ活性の変化は未だ確認できていないが、融合タンパク質は水溶性タンパク質として発現しているため、生化学的な解析に大きな困難は予想されない。ヒスチジンキナーゼ活性の確認に必要なCheYおよびCheAのP1-P2ドメインの過剰発現にも成功している。得られた融合タンパク質のアミノ酸配列の網羅的な検討により、次年度中に目的の青色光受容体キメラタンパク質の作製は十分に期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、大腸菌で発現に成功したLOVドメインとCheAの融合タンパク質について、そのキャラクタリゼーションを進める。具体的には、多量体構造の決定、発色団分子種の決定、光変換能の解析、ヒスチジンキナーゼ活性とその光依存性の解析などである。本来の多量体構造や光変換能が異なる複数種類のLOVドメインについて融合タンパク質の過剰発現に成功しているので、これら全てについて生化学的な解析を進め、目的の青色光受容体キメラタンパク質に適した条件を明らかにする。 また、融合タンパク質は水溶性タンパク質として発現した、大腸菌において生化学的な機能解析に依存しないスクリーニング系を確立する。融合タンパク質のアミノ酸配列を、部位特異的あるいはランダムに改変し、人工的に付与した大腸菌の光依存的な運動性の変化をもとに目的のヒスチジンキナーゼ活性を有するキメラタンパク質のアミノ酸配列を探索する。
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Causes of Carryover |
申請当初の計画では、青色光受容体キメラタンパク質の光変換能の解析まで見込んでいたため、それに必要な設備および物品に掛かる費用分を繰り越す必要が生じた。また、発現した融合タンパク質は当初の想定以上に発現量が多く、その単離と精製にほとんど困難が生じなかったことから、想定していた精製操作と生化学的操作が大幅に簡略化されたため、生化学的な実験に必要な器具や試薬類に掛かる費用の大部分が節約できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に実行できなかった、青色光受容体キメラタンパク質の候補となる融合タンパク質の生化学的な機能解析を行うため、高輝度単色光源やキナーゼ活性測定用試薬などの解析に必要な設備と物品の購入に充当する。また次年度では、融合タンパク質の発現系を利用して大腸菌での大規模な融合タンパク質のアミノ酸配列の順遺伝学的スクリーニングを計画しているため、そのシステムの確立と遺伝子の塩基配列の解析に掛かる物品と消耗品の購入費用に充当する。
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