2016 Fiscal Year Research-status Report
電子円二色性スペクトルを用いた天然物キラル解析における分子軌道計算解析の実用化
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16K14910
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
橋本 勝 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (40212138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根平 達夫 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (60321692)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ECDスペクトル / 理論ECDスペクトル / シクロヘルミントールX / 6置換スピロシクロプロパン |
Outline of Annual Research Achievements |
新たに単離したシクロヘルミントールXの分子式及び、NMRスペクトルは既知のAD0157に一致した。しかし、独自の解析によりシクロヘルミントールXは、別の構造であることが判明した。その後、二次元スペクトルの解析、及び推定構造のωB97X-D/6-31G*化学シフト計算などにより、きわめて珍しい6置換スピロシクロプロパン構造を推定した。さらにモデリングで求めた構造を基にBHLYP/def2-TZVP法でECDスペクトルを再現しその構造を確認した。推定構造には複数の異性体の可能性が示唆されたが、他のジアステレオマーの予想スペクトルは天然物のそれと明確な違いが見られた。 ECDスペクトル計算に用いた汎関数BHLYPはUVスペクトルの再現性の高さから選択した。このとき、同じ基底関数条件で汎関数をTPSSH, B3LYP, M06, PBE0など変化させてECDスペクトルを計算したところ、再現性には低下が見られるもののほぼ同じ傾向を与え、先の結論を補足した。いずれの計算スペクトルとも、R-帯領域では再現性が乏しかった。汎関数を変化させて構造最適化を行ったところ、配座にほとんどの違いが見られないもののECDスペクトルR-帯領域は敏感に変化した。解析の結果、発色団の共役のねじれが本領域のECDスペクトルに敏感に影響を与えること、通常の静的なモデリング解析ではその再現が困難なことなども明らかになった。またその構造にはこれまでに単離報告したシクロヘルミントールI-IVの構造が含まれており、分子間シクロプロパン化により導かれる生合成経路の提唱にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、天然物の構造から適切な汎関数を選択することを目標にしていた。ほんの九表について、一般にUVスペクトルの再現性を指標にすることで、解析に信頼性のあるスペクトルが得られること、さらに複数の汎関数を用いてECDスペクトルを計算し、ある程度の再現性が見られればさらに信頼性を高めることが出来ると結論した。通常は複数の発色団の励起子相互作用がECDスペクトルに重要であるが、発色団自身がねじれている場合、R-帯のECDスペクトルが明瞭に変化することなどを明らかにした。発色団が適切であれば、理論ECDスペクトル解析は、その絶対配置のみでなく、ジアステレオマーも判別できることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ECD計算にはも基底関数についてはdef2-TZVP, def2-TZVPPと比較的に高精度なものを用いてきた。しかし計算には分子量500程度で、並列計算(40コア以上)をおこなっても、完了に一日近く要し、現実的ではない。これまでの予備調査では、低いレベルの基底関数を用いても、低エネルギー側では高い基底関数を用いた場合と大きな変化はなく、高エネルギー側で再現性が乏しくなることが分かっている。今後、基底関数を変化させた一連の計算を行い、計算コストと構造決定におけるスペクトルの再現性についてscope and limitationを行う予定である。
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Research Products
(8 results)