2017 Fiscal Year Research-status Report
Studies on the attraction mechanism of the plant parasitic nematodes.
Project/Area Number |
16K14913
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
近藤 竜彦 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (30362289)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 植物寄生性線虫 / 誘引物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
(a) REMS factorの同定と構造解析 前年度に行った根浸出液を添加した土壌のメタゲノム解析の結果から、安定して線虫誘引活性を示すC1株とほぼ同一の配列のOTUが根浸出液に応答して存在比率を増加させることが明らかになった。さらに、根浸出液に含まれるアミノ酸を再現して調製したアミノ酸ミックスを土壌に添加して同様の解析を行った結果、前述のOTUの存在比率が増加することが明らかになり、C1株にとってのREMS factorは植物根から供給されるアミノ酸であることが強く示唆された。さらに、標準アミノ酸をそれぞれ添加した土壌から抽出した細菌DNAを鋳型とした半定量PCRによる解析の結果から、複数のアミノ酸がC1株に対してのREMS factorとして機能することが明らかになった。 (b) 線虫誘引機構の解明 根浸出液を添加した土壌のメタゲノム解析によって得られた結果を詳細に解析したところ、根浸出液の添加後24時間以内に土壌中における存在比が2倍以上増加するOTUを57個検出した。これらのOTUの16S rDNA(V3-V4領域)配列を、昨年度単離した線虫誘引細菌のものと比較した結果、線虫誘引細菌と非常に近縁かほぼ同一の配列を持つOTUが前述の57個の中に含まれていることが明らかになった。この結果は、線虫誘引細菌が根からの刺激により根圏で増殖し、そこへ線虫が誘引されるという現象が実際の土壌中で起こっていることを強く示唆している。また、前述のC1株を用いて、前年度に引き続き線虫誘引物質のキャラクタリゼーションを行った。その結果から、誘引物質の化学的本体を同定するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(a) REMS factorの同定と構造解析 当初、生理活性(C1株に対する増殖刺激活性)を指標としてREMS factorを単離する予定であったが、メタゲノム解析の結果から、少なくともC1株に対するREMS factorは植物根から供給されるアミノ酸であることが強く示唆された。単離した他の属の線虫誘引細菌にとってもアミノ酸がREMS factorとして機能しているかどうかはまだ不明である。メタゲノム解析の結果を属レベルで予備的に再解析した結果からは、線虫誘引細菌の中にはアミノ酸に応答するものとあまり応答しないものがあるようであり、今後の検討課題である。 (b) 線虫誘引機構の解明 「研究実績の概要」の項に記したように、メタゲノム解析の結果から、単離した線虫誘引細菌(またはそれらに非常に近縁な細菌)が根浸出液に応答して増殖することが強く示唆された。この結果は、根から供給されるREMS factorの働きによって線虫誘引細菌が根圏で増殖し、そこへ線虫が誘引されるというモデルの存在を示していると考えている。また、線虫誘引細菌C1株を用いた種々の線虫誘引試験から、C1株による線虫誘引現象を説明することのできる線虫誘引物質を同定した。線虫誘引試験の結果から、この物質は単独で生物検定装置内で線虫誘引現象を引き起こすことができたことから、本研究の最終的な目標である植物寄生性線虫の誘引殺虫技術の開発に利用できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(a) REMS factorの同定と構造解析 単離した線虫誘引細菌のうちアミノ酸に応答しないグループに関して、引き続きそれらの細菌に対するREMS factorを精製する系を確立し、単離した細菌の増殖を指標として精製を行う。生物検定法としては、これまでのin vitroにおける細菌培養液の濁度上昇を観察する系ではなく、土壌に検定試料を添加して一晩インキュベートし、土壌から抽出したDNAを鋳型とした定量PCRによって、注目している細菌が土壌中で増加したかどうかを調べる系を利用する。現在、根浸出液に対して最も応答性の高い1属について、特異的に16S rDNAを増幅するプライマーセットを設計、合成し、この系の確立を行っている。 (b) 線虫誘引機構の解明 同定した線虫誘引物質は試薬として安価に購入することができるが、その反面、自然環境中で容易に不活性化するなど応用面での問題も有している。そこで、自然環境中で活性物質を安定に保持し、環境中へ徐放するような担体について探索を行う。そのような担体を見いだしたら、実際に未滅菌の土壌中でサツマイモネコブセンチュウを誘引することができるかどうか検討する。それに加えて、既存の殺線虫剤と混合投与することでより効率的に土壌中の線虫を誘引殺虫できるかどうかについても検討する。これらの研究に目処が立った段階で、線虫誘引物質を用いた植物寄生性線虫の殺線虫技術に関する内容を特許申請する。
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