2018 Fiscal Year Research-status Report
Studies on the attraction mechanism of the plant parasitic nematodes.
Project/Area Number |
16K14913
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
近藤 竜彦 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (30362289)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 線虫誘引物質 / サツマイモネコブセンチュウ |
Outline of Annual Research Achievements |
(a) REMS factorの同定と構造解析 前年度までの研究から、生物検定装置内で安定した線虫誘因活性を示す土壌細菌単離株であるC1株にとってのREMS factorが、植物根から供給されるアミノ酸であることを明らかにした。一方で、根浸出液に応答して活発な増殖を見せるもののアミノ酸にはほとんど応答しない線虫誘因細菌も存在し、これらの細菌はアミノ酸とは別のREMS factorに応答していることが示唆された。このような細菌(以下B1株)が土壌菌叢中で増殖する様子をモニターするための生物検定系を確立し、アルファルファから調製した浸出液を精製出発原料として、新規のREMS factorを探索した。化合物の同定には至らなかったが、3段階のHPLCにより精製度の高い活性画分を得ることができた。 (b) 線虫誘引機構の解明 前年度までの研究から、C1株による線虫誘因現象を説明できる線虫誘引物質として鉄イオンが関与しているのではないかという予備的な実験結果を得ていた。そこで本年度は細菌への線虫誘因現象と鉄イオンの関係性について詳細な検討を行った。まず、硫酸鉄(II)を用いた検討から、0.1~1mM程度の硫酸鉄溶液が線虫誘因活性を示すことを明らかにした。さらに陽イオン交換樹脂に各種金属イオンを固定したものを用いた生物検定から、代表的な金属イオンの中で鉄イオンのみが線虫誘因活性を示すことを明らかにした。また、C1株に対する線虫誘因が硫酸鉄によって濃度依存的に阻害されるという結果が得られたことから、C1株への誘因に鉄イオンが重要な役割を果たしていることが明らかになった。さらに、鉄イオンを封入した寒天玉を未滅菌土壌に埋設して行った線虫誘因試験から、鉄イオンは土壌中でも線虫誘因作用を示すことが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(a) REMS factorの同定と構造解析 「研究実績の概要」の項に記したように、B1株に対する新規REMS factorの探索については、その活性を検出するための定量PCRを用いた生物検定系について検討し、土壌中でB1株が増殖し、その存在比率を増加させるという現象を検出する系を確立した。さらにB1株に対する増殖刺激活性が逆相樹脂に吸着しない高極性画分に観察されたことから、HILIC-HPLCを組み合わせた3段階の精製を行い、3つの活性画分を得ることに成功した。LC-MS分析の結果から、それぞれの活性画分にはまだ複数の化合物が含まれていることが明らかになったが、もう一段階の精製により活性物質を単離できると予想している。 (b) 線虫誘引機構の解明 「研究実績の概要」の項に記したように、C1株への線虫誘因現象には鉄イオンが重要な役割を果たしており、鉄イオンそのものが線虫誘引物質として機能することを明らかにした。さらに、鉄イオンは未滅菌の土壌中でも線虫誘因作用を示したことから、既存の殺線虫剤と組み合わせることにより植物寄生性線虫を選択的に誘因殺虫する技術の開発につながることが期待された。そこで、鉄イオンを利用した線虫誘引剤として特許申請を行った(特願2018-202472 線虫誘引剤)。現在、複数の企業がこの技術に興味を持っており、開発へ向けた情報交換、検討実験を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
(a) REMS factorの同定と構造解析 単離した線虫誘引細菌のうちアミノ酸に応答しないグループに関して、引き続きそれらの細菌に対する新規REMS factorの精製を行う。活性物質を単離したら、機器分析によりその構造を明らかにする。さらに活性物質の定量系を確立し、アルファルファ以外の植物でもこのREMS factorが生産されているか、その普遍性について明らかにする。 (b) 線虫誘引機構の解明 鉄イオンを用いた線虫の誘因殺虫技術の開発について、特許に興味を示した企業と情報交換、協力しながら、実用化へ向けた検討実験を行う。さらに、所属大学の知財関連部署と国際特許出願について検討を始めており、必要となる検討実験等に取り組む。特許関連の検討状況を勘案しながら、論文の作成、発表を行う。
|
Causes of Carryover |
植物寄生性線虫に対する誘引物質の化学的本体が鉄イオンであることが明らかになり、鉄イオンが土壌中においても線虫誘因活性を示すことが明らかになった。そこで、将来的に植物寄生性線虫を特異的に誘引、殺虫する技術を開発することが可能になると考え、特許申請を行った。現在、特許に興味を示した複数の企業と情報交換を行うとともに、所属大学の知財関連部署と協力して国際特許申請についての検討を行っている。特許申請に関連して、予定していなかった検討実験などを行う必要が生じたことなどから、研究期間の延長を申請した。
|
Research Products
(3 results)