2016 Fiscal Year Research-status Report
フグ肝毒性分析チップの開発を通じた新次元食品科学分野の開拓
Project/Area Number |
16K14930
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
川井 隆之 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 基礎科学特別研究員 (60738962)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | テトロドトキシン / フグ / 食品分析 / 現場解析 / マイクロチップ / 電気泳動 |
Outline of Annual Research Achievements |
食は世界に誇る日本文化の象徴であるが, 保守的である。新次元食品産業を開拓するためには, 一般的でない食材も積極的に発掘・活用する必要があるが, 製品化のためには安全性を確実に保証する必要がある。そこで極めて美味だが危険なフグ肝をモデル食品として, テトロドトキシン (TTX) 類毒素をオンサイトで検査できるシステムを開発する。小型なマイクロチップを用い, 化学分析による各毒素の直接定量などを実現し, 養殖フグ肝の食品産業化を支援しつつ, 将来的には各種危険物質に対する迅速検査システムを標準化し, 新次元食品開発スキームを確立することを目指す。 2016年度は主にミクロスケール電気泳動におけるTTXの分析可能性について検討を行った。キャピラリー電気泳動 (CE) はマイクロチップのような小さなデバイスであっても高い分離能を持って様々な分子を分離・検出できる手法であり, アミノ基を有するTTXのような電荷を持った化合物の解析に適している。まず最初にCE-質量分析 (MS) を用い, TTX分析条件の最適化を行ったところ, 10%酢酸などの酸性条件において最も効率的な分離・検出が可能であった。検出限界は5.3 amol (濃度にして5.3 nM) と極めて良好であり, 今後開発するチップ分析システムの検証に十分利用できることを確認した。 つづいて実際のフグ肝を用いて分析を行った。現場での利用を想定し, 2mm程度の肝片から直接TTXを回収するシステムを開発し, CE-MSで解析を行ったところ, 濃縮などの前処理操作なく簡便・迅速にTTXを測定できることを確認した。 今後CE-MSからマイクロチップ電気泳動システムへの移行を進め, 現場解析が可能なシステムを完成させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りCE-MSを用いたTTX標準分析法を確立できた。これは当初の予想より遥かに高感度であった。また現場解析に向けた簡易TTX抽出法を確立でき、次年度以降のオンサイト分析システムのための準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
CE-MSからマイクロチップ電気泳動システムへの移行を進め、現場解析が可能なシステムを完成させる。検出器として電気伝導度検出器 (C4D) を利用し、MS検出器との差異を評価する。最終的に夾雑物が存在してもTTX量が多く見積もられるフェールセーフ型のシステムとして完成させる予定である。
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Causes of Carryover |
テトロドトキシンなど本研究以外では用いない試薬・物品以外は他プロジェクトと共用であったため、経費を節約できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
申請時の計画経費から44%の減額であるため、2017年度交付の60万円では電気伝導度検出計の購入など予定通り計画を遂行することは難しい。2016年度からの繰越額を充当して2017年度の研究を遂行する予定である。
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