2018 Fiscal Year Research-status Report
フグ肝毒性分析チップの開発を通じた新次元食品科学分野の開拓
Project/Area Number |
16K14930
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
川井 隆之 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (60738962)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | キャピラリー電気泳動 / テトロドトキシン / 質量分析 / ポータブルデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
オンサイトでフグ肝中のテトロドトキシン (TTX) を測定可能なポータブル装置を完成させるため,キャピラリー電気泳動 (CE) 装置の小型化について検討を行った。まず小型の5.0 Vの低圧リチウムバッテリーと,同じく小型の入出力比例昇圧回路 (最大出力10 kV) を組み合わせることで,6時間以上の連続長時間分析が可能な20cm四方の小型CE分離モジュールを構築することに成功した。続いて,非接触型電気伝導度検出器 (C4D) を本モジュールに組み込んで計測を行ったところ,市販の大型CE装置を用いた際とほぼ同等の分析結果を得ることができた。TTXの検出下限は同様に10ppm程度と良好であった。そこで,実際に淡路島で採取されたコモンフグのフグ肝を対象に,CE-C4Dによる分析を行ったところ,TTXの検出予想時間にピークが観察され,TTXのオンサイト計測が可能であることが示唆された。しかし,サンプルによってはTTXと同じ検出時間に不純物ピークが重なって検出されることがあり,定量信頼性の改善が必要であることが判明した。一方で現技術水準であっても,ピークオーバーラップで得られる定量値は真のTTX量よりも高いことになり,フェールセーフの考え方に立てば,本手法に合格したサンプルについては少なくともTTXは規定値よりも少なく,安全であると言える。2019年度にはさらに最適化を進め,より定量信頼性の高いポータブル分析システムを構築する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
地震や台風の影響により電気泳動装置や質量分析機の故障が頻発したことから,研究進捗に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度には開発したポータブルCE装置の改良および分析条件の最適化をさらに進める。ポータブル装置については,現在試料注入やキャピラリー洗浄をマニュアル操作で実施しており,最終的な市販化などを見据えるのであればこれらの自動化についても検討する必要がある。一方でこれまでに報告されているポータブルCE装置はアタッシュケース程度と大型かつ機構が複雑であり,TTXのオンサイト計測には不向きであるため,ハンディサイズとなるような設計を行う予定である。最終的に定量信頼性の高いポータブル分析システムを構築する予定である。また開発した分析システムはTTX以外の毒素・栄養成分の分析にも応用可能であることから,より汎用的な市販分析システムへの応用可能性が強く示唆された。例えば汗を対象としたオンサイトPoint of Care Testing (POCT) や,環境水におけるオンサイト汚染物質計測など,健康計測分野や環境計測分野への応用についても積極的に検討を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
地震や台風などの災害および,キャピラリー電気泳動装置や質量分析装置の故障が相次いだことにより研究計画に遅れが生じ,次年度使用額が発生した。最終年度である2019年度はポータブルデバイスの改良と分析条件の最適化に多くの実験消耗品が必要となるため,主にこれらの費用に充当する予定である。
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