2017 Fiscal Year Research-status Report
ブナ林のマスティング現象は実生の生存率を高めるのか?
Project/Area Number |
16K14938
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
飯尾 淳弘 静岡大学, 農学部, 准教授 (90422740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水永 博己 静岡大学, 農学部, 教授 (20291552)
片畑 伸一郎 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (80648395)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マスティング / ブナ / 葉面積 / 光環境 / 光合成量 |
Outline of Annual Research Achievements |
苗場山の標高550mと1500mにあるブナ林固定試験地において、林分葉面積と結実量、高木層と低木層の幹肥大成長量を昨年度に引き続き測定した。2017年度の結実量は昨年と同様に少なく、凶作であった。試験地では2005年以降、2回の並作があるのみで、現在に至るまで大量一斉結実(マスティング)は発生していない。 野外調査と並行して、マスティングがブナ林の構造と内部の光環境、光合成量に与える影響の予測モデルを構築した。モデルでは、まず、凶作時の森林葉面積の3次元分布構造(20cm単位の立方体に区分して表現)から枝レベルの光環境が予測される。結実は明るい場所に集中して起こるため、予測した光環境に応じて結実量が決定される。次に、陽樹冠の枝を採取して得た結実量と葉面積の低下率の関係より、マスティングにともなう葉面積の変化が再現される。葉面積変化後の光環境を計算し、最初に計算した光環境と比較することによって、マスティング前後の林内光環境の変化を評価する。光合成量については、光-光合成曲線から枝レベルで計算され、光環境の場合と同様にマスティング前後の変化を比較する。 マスティング時(2005年)のデータを利用して、構築したモデルの動作確認を行った。結実によって葉面積は低下し、林内の光強度と光合成量が増加する予想どおりの結果が得られたが、マスティングによる森林全体の葉面積の低下幅は実測値をかなり過少評価した。原因として、枝葉面積の低下率を並作時に測定したことによる過少評価が考えられ、枝レベルの構造調査を継続する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度と同様にマスティングは起こらかったが、調査は順調に行われている。また、最終年度の総合評価に向けてモデルの構築をほぼ終えた。もし、来年度にマスティングが起こらなくとも、予備調査、過去データを加えることで、目的を達成できる見通しがついた。ただし、大雪によって林冠アクセス鉄塔が使用不可能になり、枝データの測定が難しくなったため、調査方法の変更が必要となったため、「おおむね順調」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで通り、リタートラップ、林分葉面積、光環境、幹肥大成長量、林床植物の光合成速度など、マスティングの影響評価に必要なデータを引き続き測定する。また、陽樹冠の枝の構造解析を進め、2017年度のモデルのテスト運転で問題となった、葉面積低下量の過少評価の問題の解決する。枝サンプルに必要な林冠アクセス鉄塔は使用できなくなってしまったが、その代わりに1本はしごを利用して枝サンプルの採取を試みる。10月以降はモデルを用いたマスティングによる生産構造の変化の再現に取り組む。最終的には、マスティングによる陰樹冠および林床植物の光合成量の増加幅を調べ、マスティングによる構造変化が陰樹冠にある枝や林床植物の動態に与える影響を考察する。
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Causes of Carryover |
分担研究者がその10万円を使用する予定であったが、他機関へ移動となったことで、事務手続きが遅れ使用できなかったため。H30年度はその分担者が当初の予定通りに使用する予定である。
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