2018 Fiscal Year Annual Research Report
Does heavy masting enhance survivorship of seedlings in beech forest?
Project/Area Number |
16K14938
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
飯尾 淳弘 静岡大学, 農学部, 准教授 (90422740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水永 博己 静岡大学, 農学部, 教授 (20291552)
片畑 伸一郎 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (80648395)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マスティング / ブナ / 葉分布構造 / 光環境 / 光合成量 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の結実状況は、標高550m、1500m試験地ともに豊作であった。結実にともなう葉分布構造の変化を予測するため、結実レベルの異なる15個体の陽樹冠と陰樹冠から長さ約40cmの枝を合計42本採取し、結実量と枝構造の関係を調べた。その結果、(1)結実の増加に従って個葉の面積が小さく、主軸のシュートが短くなる、(2)主軸以外のシュート長や葉の数、厚さは変化しない、(3)葉面積の変化は個体ではなく枝レベルの結実量で決まる、(4)結実のない陰樹冠では、こうした構造の変化は起こらないことがわかった。また、葉面積が低下した枝では葉の相互被陰が緩和されて、受光効率が増加することもわかった。 林分レベルの変化について、1500m試験地の葉面積指数と幹の肥大成長量が前年(凶作)よりも大幅に低下したのに対して、550m試験地では、結実量が1500m試験地とほぼ同じであったにも関わらず、そうした変化は見られなかった。個体レベルの豊凶を調べると、550m試験地では1500m試験地よりも大豊作の個体が少なく、ほとんどが並作~豊作の個体で構成されていた。個葉面積の低下は、結実の増加に従って大きくなる逆シグモイド型の曲線関係を示したため、こうした葉面積指数の違いが生じたと思われる。結実にともなう林分構造変化を予測するには、林分ではなく、枝や個体レベルの現象に注目する必要がある。 以上の結果をもとに、2017年度に構築した光と光合成量予測モデルのパラメーターを決定し、マスティング(大量一斉結実)が樹冠と林床植生の光合成量に与える影響を予測した。マスティングによって林分葉面積が凶作時の約半分まで低下した場合に、葉面積が低下しない陰樹冠や林床では、光合成量が凶作時の約2~3倍も増加し、マスティングによって樹冠下層の枝や林床の生産量が大幅に増加する可能性が示された。
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