2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K14939
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹中 千里 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (40240808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富岡 利恵 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (40456588)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 樹皮 / イオン輸送 / イオン交換反応 / スギ / コナラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「樹皮=垂直化した土壌表層」ととらえ、樹皮の理化学性をミクロ生態系のひとつとして整理するために、スギとコナラに焦点をあて、まず陽イオンの樹皮吸収とプロトン放出との関係解明を行った。 名古屋大学稲武フィールドで伐採したスギとコナラから作成した樹皮片を用いて、イオン輸送実験を行った。樹皮片を介して塩類溶液と蒸留水を接触させ、溶液中のイオン濃度変化を調べた。樹皮片としては、スギの場合「外樹皮+内樹皮」、「外樹皮+内樹皮+木部」、「内樹皮+木部」を、コナラの場合は「外樹皮+内樹皮」を使用した。塩類溶液として、塩化なとりうむ、塩化カリウム、塩化カルシウム溶液とコントロールとして蒸留水を使用した。実験前に塩類溶液と蒸留水のpHを測定し、実験開始から3日後、塩類溶液についてはpHを、蒸留水については、pHとNa、K、Ca、Mg濃度、およびCl濃度を測定した。 スギ樹皮を用いた実験の結果として、スギの塩類溶液側でpHの低下が確認された。そのプロトン増加量は「外樹皮+内樹皮」>「外樹皮+内樹皮+木部」>「内樹皮+木部」であることから、イオン交換反応は主に外樹皮で起こっていると考えられたる。加えて、(陽イオン増加量の合計)>(プロトン増加量)であったことから、イオン交換反応を起こしたイオンが樹皮を通して輸送されているわけではないと考えられたことが明らかになった。これらのことから、樹皮を通してのイオン輸送の途中で、一部のイオンが外樹皮においてイオン交換を起こしていると考えられたる。 コナラ樹皮ではイオン輸送がほとんど見られなかった。その理由としてのは、コナラはコルク組織が発達し、厚いコルク組織を形成するために、イオンが通りにくかったいことが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではスギとコナラに焦点をあて、以下の2点を明らかにすることを目標としている。 A)陽イオンの樹皮吸収とプロトン放出との関係解明 B)樹皮表面に存在する微生物による有機物の無機化反応の評価 2016年度は、(A)に関する実験を行い、成果を挙げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は、樹皮表面に存在する微生物による有機物の無機化反応の評価に焦点をあて、実験を行っていく。名古屋大学キャンパス内に生育するスギとコナラから外樹皮を採取し、洗浄せずに粉砕する。粉砕した試料を50ml遠心管に同量ずつつめ、水分で湿らせた状態で、培養器内において25℃暗条件下で培養する。 1~2週間ごとに、試料のはいった遠心管に、純水を加え一定時間振とうし、ろ過することによって培養によって抽出可能になった陽イオンを分離定量する、同様に、1M酢酸アンモニウム溶液でも抽出定量する。コントロールには、オートクレーブで滅菌した樹皮粉末を用いる。 これらの実験結果より、スギとコナラの樹皮に存在する微生物による無機化能力の違いを明らかにする。 同様の実験を、内樹皮を用いておこなう。 同所的に存在するスギとコナラの試料を他地域(5箇所以上)でも採取し、スギとコナラの樹皮上での無機化特性の違いを明らかにする。 、
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Causes of Carryover |
実験にあたって人件費を使う予定であったが、本テーマで卒業論文に取り組んだ学生がいたため、人件費が必要なくなった。また、フィールド調査も愛知県内でおこなったため、旅費がほとんど必要なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、微生物をターゲットとして行うため、昨年よりも試薬や実験用具が新たに必要となる。また微生物の童貞には、DNA解析を行う予定であるため、その費用が必要となり、繰り越した研究費をあてる予定である。
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