2016 Fiscal Year Research-status Report
胚性万能細胞に由来するマツノザイセンチュウ抵抗性苗の効率的な生産技術の開発
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16K14949
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
丸山 毅 国立研究開発法人森林総合研究所, 樹木分子遺伝研究領域, 領域長 (20353865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細井 佳久 国立研究開発法人森林総合研究所, 樹木分子遺伝研究領域, チーム長 (50353842)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 胚性万能細胞 / マツノザイセンチュウ抵抗性苗 / 不定胚形成 / クロマツ / マイクロプロパゲーション / 胚培養 / 体細胞分化 / 大量増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
針葉樹の大量増殖には、培養細胞から誘導した大量の不定胚から個体再生させることが最も効率の良い手法として知られている。本課題では、無菌培養により、不定胚形成能力を持つ胚性万能細胞から苗の大量生産技術を開発することを目的とする。この手法により、マツノザイセンチュウ抵抗性苗を安定的かつ効率的に作出するための条件を明らかにし、大きな問題となっている松枯れ対策の一環として、実用化に向けた基盤技術の開発を目指す。 今年度は、宮城県林業技術総合センターにおけるマツノザイセンチュウ抵抗性クロマツの種子を採取し、外植体として用いた。外植体を無菌化するため、99.5%エタノールに30秒、1%次亜塩素酸ナトリウム溶液に15分浸漬・撹拌し、滅菌水で洗浄処理した。その後、種皮を剥ぎ取り、種子胚を含む雌性配偶体を胚性万能細胞誘導用培地に置床した。培地には、EM培地(Maruyama et al. 2000)あるいはLP培地(Pullman et al. 2002)に、成長調節物質の2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)や6-ベンジルアミノプリン(BAP)を添加した固形培地を用いた。その結果、マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツ3家系から14系統の胚性万能細胞を誘導することができた。得られた各細胞系統は、誘導時とほぼ同じ培養条件で約2~3週間ごとに継代培養することで維持増殖が可能であった。また、誘導した各胚性万能細胞系統を不定胚誘導用培地で培養し、分化能力の検証を行った。分化能力の高い系統を選抜して、次年度の培養実験に試料として用いる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツ家系からの胚性万能細胞を誘導し、得られた細胞系統を効率的に増殖させるための培養条件を検討した。また、誘導した各胚性万能細胞系統を不定胚誘導用培地で培養し、分化能力の検証を行った。これらにより当年度に設定した研究目標をおおむね達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、胚分化能力の高い系統を選抜して、固形や液体培地で効率的に不定胚を誘導するための培養条件を解明する。また、誘導した不定胚を用いて、効率的に発芽および個体再生するための培養条件を明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況を踏まえて、次年度は、効率的な不定胚誘導及び個体再生条件を解明するために使用する額が予定より多くなることを予想されたため、一部の額を次年度に繰越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究推進のためには、培養器具類、プラスチック類や植物培養用関連試薬、無菌操作に必要な薬品や消耗品などの購入、及び植物の培養に必要な実験補助員の人件費などを計画している。また、得られた研究成果を研究集会で発表するために必要な旅費の使用を予定している。
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