2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K14951
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐野 雄三 北海道大学, 農学研究院, 教授 (90226043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 敏裕 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (60360939)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イオノミクス / 無機成分 / 灰分 / 結晶細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
樹木の主たる利用対象である材組織に比べて、樹皮に関しては高度利用のための基礎情報が不足している。これまで、樹皮には材組織よりも灰分が桁違いに多く含まれることは知られていたが、その中身について詳しいことは明らかではなかった。そのような背景から、本課題では、(1)樹皮組織における無機成分の組成や含有量に関する基礎情報を得ること、(2)樹皮組織における様々な無機成分の分布・存在状態を可視化すること、(3)土壌の無機元素組成により樹皮の無機成分がどのように異なるかを明らかにすることを目的にして、研究を実施している。 平成29年度には、新たに5樹種についてICP-MSにより26元素(Al、As、B、Ba、Be、Ca、Cd、Co、Cr、Cs、Cu、Fe、K、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Ni、P、Rb、S、Se、Sr、V、Zn)の一斉分析を行った。前年度に調べた多くの樹種と同様な一般的傾向を示すものばかりで、特定元素の超集積植物は認められなかった。さらに、どの樹種でも他の元素に比べて圧倒的に多く含まれ、結晶として存在するCa塩について知見を得るため、軟X線透視によるCa塩結晶のマクロなマッピング、および細胞内におけるCa塩の存在状態と形態解析のためSEM観察を行った。深い亀裂を生じる樹皮では、裂け目の底部に皮目が集中し、そこにCa塩結晶が集積し、中には肉眼~ルーペで認めることのできる巨大な結晶を形成する樹種があることが明らかになった。また、すべての放射柔細胞に形成後ただちに舟形結晶を細胞内に充満するほど蓄積する樹種(モクセイ科の一部)があることなど、樹皮組織におけるCa塩結晶の形態や形成、蓄積パターンの多様性について新知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
元素の一斉分析に関して新たな追加データが得られたうえ、最も多量に含まれるカルシウムに関する分析も進めることができたことから、順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに樹種数を増やして一斉分析を進める。多量、普遍的に含まれるカルシウム結晶について知見を増やすとともに、特定樹種に集積する特異な元素に関する分析を進める。
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Causes of Carryover |
(生じた理由)高価な試薬を値引きキャンペーン期間中に購入したこと、試料粉砕用の刃物等の消耗品が意外なほど耐久性があり追加購入をせずに済んだことなどにより、余剰が出たため。 (次年度計画)電子顕微鏡解析のサンプル調製に必要なダイヤモンドナイフなど高額消耗品を充実させたい。
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