2016 Fiscal Year Research-status Report
リグニンの分子形状を相溶ブレンド薄膜中で浮かび上がらせ可視化する
Project/Area Number |
16K14955
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
寺本 好邦 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (40415716)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リグニン / ブレンド / 薄膜 / 走査型プローブ顕微鏡 / 分子形状 / 可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
【はじめに】 単離リグニンの分子構造は,これまで有機化学的合理性や平均像から表現されてきた。本研究では,リグニンの構造を,可視化された実像から明快に解明することに挑戦している。そのために,リグニンの相溶ブレンド薄膜を作り,リグニン孤立鎖の分子形状をマトリックスから浮かび上がらせ,走査型プローブ顕微鏡(SPM)で可視化することを目指す。今年度は,木粉を種々の条件で粉砕・酵素分解・溶媒抽出に供してリグニンを調製し,これらと相溶するポリマーを見出した。 【実験方法】 脱脂木粉をボールミル粉砕してから工業用セルラーゼにより加水分解し,溶媒で抽出して,リグニン試料を得た。Wise法や分光法により試料中の多糖/リグニン比を見積もった。得られるリグニン試料を溶液キャスト法により合成ポリマーと複合化した。一連の試料は熱分析にも供した。 【結果】 リグニン試料の熱分析により,酵素分解に伴ってガラス転移温度(Tg)が明確になった。Tgは粉砕時間の増大により低温シフトするとともに狭小化した。粉砕・酵素処理試料を溶媒抽出して得られるリグニンリッチな試料は,非極性プロトン溶媒に溶解可能で,種々の合成ポリマーの溶液と混合・キャストしてブレンド試料を得ることができた。ブレンドのTgは単一且つブレンド組成に応じてシフトすることから,ブレンド成分は相溶状態にあることが確認できた。ブレンド溶液をスピンキャストし,SPM観察を行ったところ,試料調製と観察の条件によっては異種成分が混在していることが示唆された。この結果から,本課題で取り組んでいる手法により,リグニンの分子形状を可視化できることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リグニン試料のつくり分けを達成しつつあり,得られるリグニンと首尾よく相溶する合成ポリマーを発見することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
種々の条件で調製したリグニン試料と,異なる性質を持つ合成ポリマーとの相溶ブレンド系の探索を続ける。スピンキャスト薄膜のSPM観察に集中的に取り組み,リグニンの分子形状の可視化を目指す。別途,スピンキャスト以外の薄膜の調製にも着手する。
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