2016 Fiscal Year Research-status Report
海洋に溢れる未知ウイルスの正体は珪藻ウイルスに寄生するウイルスか?
Project/Area Number |
16K14963
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
外丸 裕司 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, 主任研究員 (10416042)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 珪藻 / ウイルス / サテライト |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は海洋性浮遊珪藻キートセロス・デビリスに感染するウイルス様因子ChV83の解析を実施した。本ウイルスを宿主培養に接種すると、宿主の崩壊は約2週間後に起きた。宿主の溶藻は、他の珪藻ウイルスによる死滅と比較して緩慢であると思われた。次に大量培養したウイルス粒子について、電子顕微鏡を用いてネガティブ染色観察したところ、25nmの粒子が観察された。また、ウイルス感染した細胞の切片を観察すると、大小2種類の異なるウイルス様粒子が観察された。そのうち小型のウイルス様粒子は、ネガティブ染色像の粒子と概ねサイズが等しかった。本ウイルスのタンパク質を、SDS電気泳動法を用いて解析したところ、26-28kDaのバンドが確認された。回収したウイルス粒子からゲノムを抽出して電気泳動を実施したところ、約1.2kbならびに0.7kb付近に計2本のバンドが観察された。さらに大量にゲノム抽出を行った時には、上記2本のバンドに加えて5-6kb付近に比較的薄い2本のバンドが確認された。以上の観察結果は、これまでに知られているCdebDNAVの溶藻パターン、粒子サイズ等とは異なっていた。さらに電子顕微鏡観察で2種類の粒子が観察されたことや、ゲノムの電気泳動パターンが既知のものと異なることから、今年度解析したウイルス様因子は、本種に感染する従来のssDNAウイルスCdebDNAV(粒径38nm)を含むが、それ以外の因子も同時に存在している可能性、すなわちサテライトウイルスが存在しているが可能性が推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたウイルスの性状解析はほぼ順調に進んでいる。ゲノムの塩基配列解析のための準備も順調に進んでいる。そのため、本課題は概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究に対するアプローチは現状のままで良いと判断される。今後は種や株の異なるウイルスの基本性状解析を進めるとともに、ゲノム構造の解析を加速させる予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は順調に研究が進んだため、解析にかかる予算など、予定していた研究費を抑えることができた。来年度は本課題に関連するウイルスについて、さらなる解析を進めていくため、解析関連の試薬や消耗品などに研究費を割く必要が生じた。そのため、本年度の研究費の一部を来年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度に基本生物学的性状を解析したウイルスについて、塩基配列解析を完了させることを目的とし、繰り越した予算はシークエンス関連の試薬消耗品、塩基配列解析、さらに当該分野の専門家との打合せ旅費などに充てる予定である。
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