2017 Fiscal Year Research-status Report
魚類糞便を用いた健康診断法の開発:魚からのストレスメッセージを非侵襲的に読み解く
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16K14964
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
羽野 健志 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, 主任研究員 (30621057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 克敏 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, 主任研究員 (80450782)
伊藤 真奈 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, 任期付研究員 (60735900)
内田 基晴 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, 主幹研究員 (70371961)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 糞便 / 環境ストレス / 代謝物 / 腸内細菌 / 非侵襲 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、魚類(マダイ)をモデル生物として、実験生物に全く痛みを与えずに環境ストレス影響を糞便中の各種指標の変化から検出・評価する方法を開発することを目的として行った。29年度は、ストレス負荷試験として過密養殖試験を行った。試験は、持続的養殖生産確保法で定められた許容飼育密度(10 kg/m3)を参考に低密度(約4.6㎏/m3)と高密度(同14㎏/m3)を再現した水槽内で21日間行った。試験期間中、週に1度成長指標(全長・体重)を記録した。7、21日目には肝臓中のストレスマーカー(Superoxide dismutase:SOD)を測定するとともに、糞便を採取し糞便中細菌の資化能、細菌叢解析、および代謝物総体解析を行い、過密養殖によるストレスを糞便中の各種指標の変化から検出することを目指した。 成長指標は、試験開始14日目より低密度区の個体の平均体重が高密度区に比べ統計学的に有意に増加した(試験終了時で約10%増)。肝臓中のSODは、7日目のみに高密度区で有意に増加した。これらの指標に加え、高密度区では外観上傷やヒレの擦れが散見されたことから供試魚が過密養殖によりストレスを受けていると判断した。糞便中細菌の資化能、細菌叢、代謝物総体解析の結果、すべての指標で7日目に比べ、21日目で処理区間で大きな変化が見られた。すなわち、資化能においては全資質の16%(q<0.05)が変化し、主成分分析においても顕著な2つのクラスターを形成した。細菌叢は、Proteobacteria門の割合が高密度区で増加する傾向が見られ、種組成の変化が見られた。糞便中代謝物では11%の代謝物が有意に変化した(p<0.05)。以上の結果、密殖により生物体(マダイ)は成長抑制によるストレスを受けており、それらが裏付けられる形で腸内環境が変化していることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過密養殖を環境ストレス源としたケーススタディとして、供試魚の糞便の変化を①代謝物、②腸内細菌叢の資化能、③腸内細菌叢の種組成から考察した。その結果、各指標に顕著な変化がみられ、腸内環境の変化が詳らかになった。以上より、本研究の達成目標である「実験生物に全く痛みを与えずに環境ストレス影響を検出・評価する方法を開発」に向け、平成28年度の有害化学物質を環境ストレス源としたケーススタディとともに、着実に成果をあげることができていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、現場での具体的な適用を目指し、平成29年度とほぼ同じ実験デザインのもと過密養殖試験を屋外水槽を用いて行う。糞便以外のマトリックスが多く含まれる現場環境で、過密養殖によるストレスを糞便中の代謝物や腸内細菌叢の変化から検出することを目指す。最後に、「実験生物に全く痛みを与えずに環境ストレス影響を検出・評価する方法の開発」に向け、糞便を用いた手法を取り纏めることとする。
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Causes of Carryover |
(理由) 糞便中の腸内細菌叢解析の外注費が当初の予想以上に低コストで実施することができたため。 (使用計画) 糞便中の腸内細菌叢の解析に資する検体数を当初計画より増やし、実験の頑強性の担保のために使用することとしている。
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Research Products
(3 results)