2016 Fiscal Year Research-status Report
海産無脊椎動物人工種苗の害的コペポーダ類殲滅システムの開発
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16K14965
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木島 明博 東北大学, 農学研究科, 教授 (50161451)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マイクロナノバブル / 無脊椎動物 / ラバールノズル / 旋回流式 / コペポーダ / 人工種苗生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、海産無脊椎動物の人工種苗生産時において、対象生物の幼生や稚仔期において最大の害的生物となるコペポーダ類を、旋回流式およびラバールノズル式マイクロナノバブル発生装置を用いて殲滅するシステムを開発することを目的とする。 平成28年度は旋回流式およびラバールノズル式マイクロナノバブル発生装置を発注するとともに、その装置の殲滅効果について東北大学女川フィールドセンターの飼育実験施設および実際のマナマコの人工種苗生産をしている岩手県栽培漁業センター種市事業所の協力を得て実際の飼育施設を借用して実験を行った。 その結果、ラバルノズル式キャビテーション処理によるコペポーダ殺傷能力は、コントロール区では7350±557個体(平均個体数±標準偏差)の生存個体が観察されたのに対し、処理区では2700±605個体の生存が観察され、有意な生存個体数の減少が確認された(P<0.01, Mann-Whitney’s U-test)。水槽への投入個体数は11600個体であったため、処理区での生存個体数は処理前の23.3%であり、コントロール区の36.7%であった。また、ラバルノズル式キャビテーション処理による種苗への影響について、ラバルノズル式キャビテーション処理水槽内にて飼育した稚ナマコ・稚ウニは処理後4日時点で全個体の生存が観察された。また形態的な損傷などはみられなかった。一方、旋回流式キャビテーション処理によるコペポーダの殺傷能力について、各区での生存個体数は12時間で12300/15300個体(処理区/コントロール区)、27時間で17250/28375個体、36時間で15000/27600個体、46時間で19600/44400個体であった。処理区におけるコペポーダの生存個体数はコントロール区の80.4%(12時間)、60.8%(27時間)、54.3%(36時間)、44.1%(47時間)に減少しており、処理時間が長くなるにつれ減少率も増加した。いずれの方法にしても害的生物殲滅の効果があることが実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度においてマイクロナノバブルによるコペポーダに対する殺傷能力が存在することが判明した。また、それぞれの殺傷能力において、ラバールノズル式は1回の通水で60%から90%の殺傷能力を持つのに対し、旋回流式は40%から50%レベルであった。しかし、ラバールノズル式は高い水圧を必要とすることに対し、旋回流式はその半分程度の水圧で効果を表すことが判明した。これによってどちらが良いという結果ではなく、それぞれの特徴を生かした使い方をすることによって、状況に応じた対応ができることが分かった。 以上、当初の目的であった殺傷能力の実験ができたこと、一方で新たな方向性が見出されたことから本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度においてマイクロナノバブルによるコペポーダに対する殺傷能力が存在することが判明した。本年度は旋回流式マイクロナノバブルに対しては独自でその装置を組み込んだより使用しやすい装置を設計し、プロトタイプを作成とすること、その装置を用いてコペポーダの殲滅実験を行い、昨年の結果と合わせて殺傷効果の結果を得る。また、昨年借用したラバールノズル式マイクロナノバブル発生装置を改良し、プロトタイプを購入すること、およびその装置を使用してコペポーダの殲滅実験を行い、昨年の結果と合わせて殺傷効果の結果を得る。二つの殺傷能力を持つ装置の特徴を生かして、それぞれの効能、使用方法について明らかにし、両装置を使った実用的使用法を明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成28年度の購入予定であったラバールノズル式マイクロナノバブル発生装置を、さらに改良して購入することにしたためその分を次年度に残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、昨年度改善案を指示したラバールノズル式マイクロナノバブル発生装置を購入する。
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