2016 Fiscal Year Research-status Report
全ゲノムリシーケンスによる高効率な海産魚遺伝資源管理技術の開発
Project/Area Number |
16K14966
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊池 潔 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20292790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片町 太輔 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, 研究員 (60443371)
鈴木 重則 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 増養殖研究所, 主任研究員 (60463105)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 水産学 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、水産生物の全ゲノム情報を得ることが比較的容易となり、その水産業への応用が期待されている。しかしその技術を「水産資源の現状評価・管理技術の開発」に効果的に活用した例は日本ではなく、世界でも技術開発の試行錯誤が続いている段階である。本研究では、水産ゲノム研究者と漁業資源研究者が連携することで、「水産魚多個体の全ゲノム配列解析」を行い、これまでにない精度で海産漁業資源の遺伝的特性を解明することを目的とする。
解析用のトラフグ個体を得るため、太平洋系群魚と日本海系群魚のサンプリングをおこなった。予想外なことに日本海系群個体のゲノムの一部が若干分解しており解析不可能なことが判明した。これについて次年度4月に再収集をおこなう予定である。
ふたつの系群各10個体について、全ゲノム配列を次世代シーケンサーで取得して得られたリードを解析したところ、1個体あたり約80万個の一塩基多型(SNP)が存在することがわかった。個体間の遺伝的距離をしらべたところ、地域に依存したクラスターを形成した。この情報は資源管理に資する可能性があるが、今後個体数を増やして再現性を確認する必要がある。また最近、地域集団間の遺伝的分化がゲノムの一部の領域にのみ認められる事例が報告されており、これまでの少数遺伝子座による解析が、こういった地域適応関連ゲノム領域を見逃している可能性が指摘されている。今後の資源管理はこういったゲノム領域の多様性保持にも留意する必要がある。そこで2集団の全ゲノム配列を詳細に比較したところ、局所的に塩基多様度が異なる領域を複数みつけることができた。これらは地域適応関連領域である可能性があるものの、さらなる解析を進めてより強い証拠を得る予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サンプリングした日本海系群個体のゲノムの一部が若干分解しており解析不可能なことが判明した。これについて次年度4月に再収集をおこなう予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度得られなかった日本海系群個体を得て、全ゲノム配列の解析を継続する。
全ゲノム解析から得られる情報を資源管理に活用するためには、安価迅速なSNP判定技術の開発も必要となる。そこで以下のシステム(1kSNPシステムと命名)を開発する。まず中立マーカー用SNP座、性判別マーカー用SNP座、地域適応関連マーカー用SNP座を合計で1000座選び出す。これらSNPを挟みこむようなプライマーを1000 セットを設計して合成し、1 個体のゲノムと混ぜて、一つのチューブ内で反応させ、1000 種のアンプリコンを得る。各個体についてアンプリコン群をラベルした後に96 個体を集約して、次世代シーケンサーに付し、その後の解析により各SNP 座の遺伝子型を判定する。
漁業組合や水産研究機関の協力を得て三河湾と若狭湾から、トラフグ個体を採集する。これを1kSNPシステムに付して、放流個体を同定する。その際、放流用親魚・採集個体間の連鎖不平衡ブロックの保存度を利用する。
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Causes of Carryover |
天候、不漁等の問題でサンプリングが予定どおりにはすすまなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額のほとんどは、当初の予定通り主にサンプリング費用にあてる。
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Research Products
(8 results)