2017 Fiscal Year Annual Research Report
Estimation of spawning temperature for bluefin tuna using oxygen stable isotope ratio
Project/Area Number |
16K14968
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 伸吾 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (90202043)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | クロマグロ / 酸素同位体比 / SIMS / 温暖化 / 耳石 / イオンビーム / 産卵水温 |
Outline of Annual Research Achievements |
東京都築地市場およびマグロ仲卸業者より入手したクロマグロ頭部(ヨコワ含む)134個体から、実験室で頭部を解剖し左右の耳石を摘出した。その一部について、年齢査定用および酸素同位体比分析用にそれぞれの耳石を樹脂に包埋し薄片を作製した。本研究では、高分解能である二次イオン質量分析器 (SIMS: Secondary Ion Mass Spectrometry)を用いて分析を行うため、摘出した耳石の切断・樹脂包埋、切削・研磨、標準試料の調整などに必要な本研究に特化した高精度な試料前処理手法を確立した。この試料前処理を施した後、SIMS (CAMECA IMS 1280-HR)を用いて鏡面仕上げした耳石試料5個の酸素同位体比分析を行った。分析には、Cs+イオンビームの大きさを約10ミクロンに設定し、耳石核から縁辺部までを1試料あたり41~78点測定した。その結果、全てのサンプルにおいて、第1年輪周辺(約800ミクロン~)までの間に約1~2‰の酸素同位体比の増加が認められた。第1年輪周辺は水温の低下し始める秋~冬の時期に相当し、酸素同位体比の増加は実際に個体が経験した水温を反映していると考えられる。このことから、本研究にて確立した試料前処理手法は、SIMS分析で得られるデータの精度を十分に発揮できたものと考えられる。産卵後、数ヵ月とみれる期間の酸素同位体比は、6ヵ月以上経過したとみられる期間に比較し酸素同位体比が2‰高く、これは季節変動に伴う水温の低下とともに、さらに高緯度の低水温帯にクロマグロが移動したことを示す結果と推定できる。また、産卵後、2ヵ月程度の期間には0.5‰程度の違いが個体間に認められ、この違いが東シナ海産卵群と日本海産卵群の違いを表している可能性があることが分かった。
|