2016 Fiscal Year Research-status Report
次世代シーケンサーを用いた天然魚における優良形質の全ゲノム相関解析
Project/Area Number |
16K14972
|
Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
坂本 崇 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (40313390)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | アユ / 冷水病 / 次世代シーケンサー / 感染実験 / ゲノム / 育種 / 耐病性 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)次世代シーケンサーによるアユゲノム簡易ドラフト配列の作成 次世代シーケンサーによる用いたGBS(Genotype by Sequencing)解析を実施する際に、対象生物のドラフト配列の有無で得られるデータ精度およびデータ量が高まることがわかっている。そこで、次世代シーケンサー(illumina社: HiSeq、 PacBio社:PacBio RS II)を用いて、ドラフト配列を作成した。(アユゲノムは、事前の全ゲノム量解析で約450Mbということが明らかになっている)。illumina社のショートリードデータはPlatanusを用いてアセンブルを行った。さらにそのアセンブルデータのギャップ補完のために、PacBio社のロングリードデータをPBJellyで解析した。その結果、約460Mbのアセンブルデータが得られ、N50が4.44Mb、最長scaffoldが17.19 Mpとなった。これまでに作成しているアユマイクロサテライト連鎖地図上には、約70%のscaffoldがマッピングされた。
(2)天然アユ稚魚を用いた冷水病人為感染実験の実施 宮崎県に2月に海で採補され(沖どり)、飼育された天然アユ(約20g)を用いて冷水病人為感染実験を行った(協力機関:広島県立水産海洋技術センター)。まず供試魚において、冷水病菌の保菌検査を実施し、陰性であることを確認した。人為感染実験に用いる菌量は、予備実験結果から、上記の1尾当たり2.4x10の7乗cfu(n=50)とした。死亡率は、60%(生残魚20尾、死亡魚30尾)となった。これらの個体からゲノムDNAを抽出し、GBS(Genotype by Sequencing)解析よる全ゲノム相関解析(GWAS)や冷水病耐病性遺伝子座領域の相関解析に用いる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)次世代シーケンサーによるアユゲノム簡易ドラフト配列の作成 次世代シーケンサー(illumina社: HiSeq、 PacBio社:PacBio RS II)を用いて、ドラフト配列を作成した。アユのゲノムサイズと同等な約460Mbのアセンブルデータが得られ、N50が4.44Mb、最長scaffoldが17.19 Mpとなったことから、当初の予定通りのアユ全ゲノムドラフト配列を得ることができたと考えている。また、本解析で得られたscaffoldの70%をこれまでに作成しているアユマイクロサテライト連鎖地図上にマッピングできたことは、当初の予定を上回るものであると考えている。
(2)天然アユ稚魚を用いた冷水病人為感染実験の実施 宮崎県に2月に海で採補され(沖どり)、飼育された天然アユ(約20g)を用いて冷水病人為感染実験を行った。まず供試魚において、冷水病菌の保菌検査を実施し、陰性であることを確認した。人為感染実験に用いる菌量は、予備実験結果から、上記の1尾当たり2.4x10の7乗cfu(n=50)とした。死亡率は、60%(生残魚20尾、死亡魚30尾)となった。本実験に供試した天然アユは、入手状況の関係で20gサイズと予定していたサイズよりも大きく、感染実験に多数のサンプルを用いることが難しかったが、宮崎県産アユの冷水病耐性形質の特性を理解できたことから、当初の予定通りの成果と考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)次世代シーケンサーを用いたGBS(Genotype by Sequencing)解析 人為感染実験で採取した生残魚、死亡魚のゲノムDNAを用いて、GBS(Genotype by Sequencing)解析を実施する。50個体を1プールとして、1ライブラリー(生残魚群、死亡魚群)を作成し、各ライブラリーを次世代シーケンサー(Illumina社:Hiseq)で解析する。なお、次世代シーケンサー(Illumina社:Hiseq)の解析は、外部委託解析を利用する。解析には、昨年度に感染実験に用いたサンプルを予定しているが、他集団の小型天然アユを入手・解析することも検討する予定である。
(2)GBS解析データを用いた耐病性形質に対する全ゲノム相関解析 GBS解析によって得られたデータを用いて、生残魚群と死亡魚群とを比較し、生残魚群に特有に出現するSNPを探索する(全ゲノム相関解析:GWAS)。生残魚に特有に出現したSNPのアユゲノム地図上の位置を解析し、これまでに明らかになっている冷水病耐病性遺伝子座との関連性を明らかにし、天然魚の耐病性形質に対する全ゲノム相関解析の有効性を検討する。天然魚の耐病性形質に対する全ゲノム相関解析が機能していれば、これまでに明らかになっている冷水病耐病性遺伝子座周辺に生残魚に特有に出現したSNPが位置づけられるはずである。なお、GBS解析によって得られるSNPデータだけでは、これまでに明らかになっている冷水病耐病性遺伝子座領域のデータが不足する可能性があるため、冷水病耐病性遺伝子座領域のSNP解析方法を確立し、その領域から得られるデータの補完を検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
本研究課題は、当初の予定通りに成果が得られた。アユ全ゲノムドラフト配列の作成において、追加のデータ収集が必要と考えていたが、ドラフト配列としては十分な結果が得られたため、追加のデータ収集を実施しなかった。また、次年度のGBS解析等の準備およびその相関解析に必要な経費を集中させるため、予算の一部を次年度に持ち越すこととした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画通り、感染実験で得られたサンプルの相関解析を実施する。GBS解析とともに、冷水病耐病性遺伝子座領域のSNPを用いた相関解析にも使用する予定である。
|