2016 Fiscal Year Research-status Report
閉鎖的水域におけるタイ科魚類の浮遊卵をモデルとした魚卵生態遺伝情報の開拓
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16K14974
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
海野 徹也 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (70232890)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クロダイ / タイ科魚類 / 浮遊卵 / 生残 / 遺伝生態 / 広島湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
広島湾において湾内外にそれぞれ7定点、計14定点を設定した。4月下旬~7月上旬にかけて計7回の卵採集を行った。採卵は船上からのポンプアップ法で行い、各定点とも水深5mおよび10mから採集を試み、水温、塩分、溶存酸素濃度を計測した。得られた魚卵のうち、卵径0.8㎜前後の真球形卵を選定した。これの卵を検体として、不味、卵からの最適なDNAの抽出を検討した。次に、ミトコンドリアDNA16SやCO1をターゲットにDNAシーケンス解析を行い、種同定を行った。クロダイについては種特異的なPCRプライマーを設計し、ワンステップPCR法により種同定が可能になった。クロダイの卵密度を湾内と湾外で卵密度を比較すると、概して湾外の方が高かった。湾外は湾内に比べて塩分が安定しており、水温・塩分共に高いことが要因と考えられる。卵密度の高い定点は、共通点としてカキ養殖場が近くに存在した。広島湾クロダイはカキ筏周辺で盛んに産卵している可能性が示唆された。一方で、卵密度が著しく低かった定点は湾奥部で、クロダイ成魚が低塩分帯での産卵を回避している可能性が考えられた。水深で卵密度を比較すると、5mに比べて10mで卵密度が高くなった。広島湾クロダイはカキ筏を中心に、水深10m以深で産卵している可能性が考えられた。クロダイ卵について、多型性の高いマイクロサテライトDNAマーカーを用い遺伝的多様性を精査したところ、卵の遺伝変異は既に親魚レベルに達していることが明らかとなった。また、遺伝変異から推定した親魚数は無限大となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、①浮遊卵の発生段階をシステマチックに推定できる手法をDNA多型および定量解析によって確立することである。フィールドでは3種のタイ科魚類の卵を用いて②親魚資源量(卵密度とNe)、③産卵場や産卵時間の解明、④卵発生段階による減耗率の推定⑤DNA多型解析による遺伝子流動(ジーンフロー)の把握、⑥浮遊卵の捕食者の特定や減耗要因の解明を試みることである。①につてはDNA抽出方法も確立し、極めて順調である。②③につては、学会発表も行うなど、研究成果も集積しつつある。②③については、計画通りデータが集積されつつある。⑤についても初年度において既に解析に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は概ね計画通り進行しており、今後も①~⑥の特徴的中課題を遂行することで、閉鎖的水域におけるタイ科魚類の浮遊卵から、効果的に生態遺伝情報が得られると考えられる。
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Research Products
(2 results)