2016 Fiscal Year Research-status Report
バキュロウイルス遺伝子導入系の魚類生殖生理研究における利用技術開発
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16K14979
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
井尻 成保 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (90425421)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | バキュロウイルス / ウナギ / ティラピア |
Outline of Annual Research Achievements |
1、濾胞刺激ホルモン(FSH)強制発現ベクターの作製:バキュミドへの外来遺伝子転送用pFastBac-FSH強制発現ベクターを作製した。pFastBacに終止コドンを除いたウナギFSHβサブユニット、15残基のリンカーおよび終止コドンを含めたウナギFSHαサブユニットを連結したcDNAを挿入したベクターを構築した。 2、FSH強制発現ベクターによる培養細胞におけるFSH産生分泌の確認:ウナギ腎臓由来EK1細胞へのトランスフェクションでは、pFastBac-GFP強制発現ベクターを用いた4種類のトランスフェクション試薬を試した結果、FreestyleMaxのみである程度の導入が見られた。これを利用してリンカーを含むpFastBac-FSHベクターをHEK293T細胞、EK1細胞にトランスフェクションした。培養後、細胞抽出タンパク、培養液をサンプルに抗ウナギFSHβ抗体を用いてウェスタンブロット解析を行った結果、いずれの細胞でも、細胞抽出タンパクからは明瞭な陽性バンドが検出されたものの、培養液からは検出されなかった。 3、ベクターの再設計:リンカーが立体構造に影響することで正常にFSHが分泌されない可能性を考え、ウナギFSHβおよびαサブユニット、それぞれ個別に発現するベクターを設計した。終止コドンを含んだβサブユニットと終止コドンを含めたαサブユニットの間にIRES配列を組み込んだcDNAを挿入したpFastBacベクターを構築した。 4、KE1細胞の生体移植の検討:GFP強制発現pFastBacベクターをトランスフェクションしたEK1細胞をウナギ腹腔内に移植した後、1週間後に開腹したがGFPの蛍光は確認されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1、当初、ウナギFSH強制発現ベクターを構築し、EK1細胞でのFSHの分泌を確認した後、バキュロウイルスの作製を行う予定であった。しかし、細胞内でのFSH産生は確認されたものの、培養液への分泌が確認できなかった。リンカーを介した複合タンパクを設計したため、立体構造の違いにより分泌されない可能性を考慮して、それぞれのサブユニットを個別に転写するように設計したベクターを新たに構築した。今後、このベクターをトランスフェクションした細胞においてFSHの分泌を確認していくが、もし、分泌されないようならプロモーターの変更など、新たに設計したベクターを構築する予定である。予定よりも分泌性FSHを強制発現させるベクターの構築に時間がかかっている。 2、GFP発現EK1細胞をウナギ腹腔に移植したが、1週間後にGFP発現細胞の残存が確認できなかった。10万程度の細胞を移植したが、移植細胞を100万程度に増やして移植後の残存率を検定する。予想よりも細胞残存率が低いのか、または、一過性発現のためGFP発現が検出限界以下に低下していた可能性も考えられ、当初の予定通りには進行していない。
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Strategy for Future Research Activity |
1、分泌性FSH強制発現ベクターの構築に注力する。2つのサブユニットの結合構造がFSHの分泌に影響していることが考えられるため、単一タンパク構造を持つティラピアGsdf(分泌型TGF-β)強制発現ベクターの作製も平行して進め、HEK293およびEK1細胞における分泌を検証する。Gsdfも分泌されない場合は、pFastBacのプロモーターを他のプロモーターに入れ替えることも検討する。 2、FSH、Gsdf発現分泌ベクターの構築に時間がかかると予想されるため、GFP強制発現バキュロウイルスを利用して、安定してGFPを発現するEK1細胞を作製し、そのウナギへの移植、ティラピア培養精巣への導入、ティラピア受精卵への導入に関わる条件検討を進める。EK1細胞の移植では、まずは100万細胞程度の大量移植を行い、徐々に細胞数を減少させて、2週間程度は残存する移植条件を見つける。ティラピア受精卵への導入では、卵膜をバキュロウイルスが通過できない可能性を考え、まずは顕微注射で卵膜の中にウイルスを導入する(細胞には注入しない)。成功すればトランスポゾン発現バキュロウイルスと共に注射し、GFP遺伝子が染色体に組み込まれるかどうかを検定する。 H29年度は以上の課題を検討し、次年度にFSH分泌EK1細胞移植によるウナギ性成熟の促進を試み、また、ティラピア培養精巣へのGsdfの導入も試みる。ティラピア受精卵への遺伝子導入が良好であれば、ウナギ受精卵への外来遺伝子導入も試みる。
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