2016 Fiscal Year Research-status Report
親魚への腹腔内注射でゲノム編集する新技術の開発-多様な養殖魚への応用を目指して-
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16K14980
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 徹 東北大学, 農学研究科, 教授 (70344330)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇治 督 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 増養殖研究所, 主任研究員 (40372049)
横井 勇人 東北大学, 農学研究科, 助教 (40569729)
木下 政人 京都大学, 農学研究科, 助教 (60263125)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水産増養殖 / ゲノム編集 / 遺伝子導入 |
Outline of Annual Research Achievements |
CRISPR-Cas9法は、ゲノム塩基配列を任意に書き変えことができるゲノム編集技術で、これにより魚類でも遺伝子破壊やノックインが可能となった。CRISPR-Cas9の応用は、水産養殖分野では高成長等の新品種作出が期待されているが、実用化への最大のネックは、ゲノム編集操作を行ったF0からホモ変異体を作出するまでに3世代の交配が必要で、養殖対象魚種では6年以上を要することである。本研究では、新品種作出に要する時間を大幅に短縮することを目的として、成熟雌親魚への腹腔内注射により、CRISPR-Cas9法のコンストラクトを卵巣内の卵母細胞に導入する技術を開発し、F0でホモ変異体を作出する技術の開発を目指す。 受精卵に導入するCRISPR-Cas9のコンストラクトの組み合わせには3通りある;(1) guide RNAとCas9 (guide RNA 依存DNA切断酵素)配列を組み込んだプラスミドDNA、(2) guide RNAとCas9 mRNA、(3) guide RNAとCas9タンパク質。本年度は、 (1)の方法を検討するために、エレクトロポレーション(EP)によるプラスミドDNAの卵母細胞への導入効果を試験した。CMV-GFPプラスミドを腹腔注射してEPを行い、GFP蛍光により卵母細胞へのプラスミド導入効果を調べた結果、卵巣で強いGFP蛍光を検出できたが、蛍光を発するのは卵母細胞を覆う濾胞細胞だけで、卵母細胞からは蛍光が検出できなかった。EP法では、卵母細胞への導入は難しいものと判断された。 骨格筋細胞には、筋肉注射とEPの組合せにより、効率的にプラスミドを導入でき、分泌型ルシフェラーゼであれば、筋細胞でタンパク質が合成・分泌され、卵母細胞に取り込まれた。筋細胞にCas9タンパク質を合成・分泌させ、Cas9を卵母細胞に取り込ませることが可能かもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵母細胞へのプラスミド導入によるゲノム編集は困難であるなど、初年度では腹腔内注射によるゲノム編集の実用化には至らなかった。タンパクで導入するなど、原理の異なる手法を試みる必要がある。 プラスミド導入により、長期間(ゼブラフィッシュでは100日以上)筋肉でタンパク質を合成・分泌されることが可能であることが分かった。この技術は、成長ホルモンを筋肉で分泌させることで成長を促進させるなど、ゲノム編集以外に応用できる可能性が高く、実用化したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2通りの導入法を試験する。最初に、guide RNAとCas9タンパク質を結合させた状態(標的DNA配列を切断する状態)で雌腹腔内に注射し、エレクトロポレーションで卵母細胞への導入を試みる。次に、プラスミドベクター、キャリアペプチドおよび遺伝子導入試薬(リポフェクタミン)の複合物を雌腹腔内に注射し、ベクターの卵母細胞への導入を試みる。 昨年度用いたゼブラフィッシュに加え、メダカと海産魚のササウシノシタでも遺伝子導入とタンパク発現効果を調べ、魚種間による効果を比較する。
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Research Products
(5 results)