2016 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞のミトコンドリアを特異的な標的とする新規ラメラリン誘導体の創製
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16K14986
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
石橋 郁人 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (10192486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平坂 勝也 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 助教 (70432747)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ピロールアルカロイド / 海洋天然物 / トポイソメラーゼ阻害活性 / 抗がん活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
高いトポイソメラーゼ(Top1)阻害活性を持つ海洋天然物ラメラリンに,がん細胞のミトコンドリアに集積する特性を持つトリフェニルホスホニウム(TPP)カチオンを有機合成化学的手法により結合させることにより,がん細胞のミトコンドリアトポイソメラーゼ(Top1mt)を特異的なターゲットとする新規な高選択的抗がん活性化合物の創製を目指した研究を行っている。TPPカチオン部分は,難分解性のエーテル結合型あるいは生体内で加水分解が可能なエステル結合型のリンカーを介してラメラリン部位に結合させる予定であるので,本年度は,リンカー部位との結合に必要なラメラリン部位の合成を行った。なお,合成にあたっては,天然物の全合成法の開発をも視野に入れた独自の2種の方法を検討した。 まず初めに,イソシアノ酢酸を用いるピロール形成反応を鍵反応として用いる方法を検討した。2-Benzyloxy-4-isopropoxy-5-methoxybenzaldehydeとマロノニトリルとの縮合により得られるベンジリデンマロノニトリルとイソシアノ酢酸エチルとの付加環化反応,ラクトン化等によりラメラリンのC, D, E環部位を構築した。この3環系化合物と2-(2-bromo-4-methoxy-5-isopropoxyphenyl)ethanolとのMitsunobu反応によるN-アルキル化及び分子内Heck反応により,1位にシアノ基を持つラメラリン骨格化合物Aを合成した。 次に,Paal-Knorr反応を基軸とする方法を検討した。O-イソプロピルアセトバニロンとO-イソプロピルバニリンとの縮合により得られるカルコンへのシアノ酢酸エチルの付加及び酸化的脱シアノ化により1,4-ジケトンを得た。次いで2,2-ジメトキシエチルアミンとの脱水縮合と脱メタノール閉環により鍵中間体である3環系化合物を合成した。この化合物からラメラリン骨格化合物への変換は検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,既存の方法によりラメラリン骨格化合物を合成する予定であったが,より効率的な新規合成法を検討し,目的としていた化合物の合成に成功した。但し,今年度以降の研究を円滑に行うためには,スケールアップによるラメラリン骨格化合物の量的な供給が必要であるため,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で確立した合成法により,ラメラリン骨格化合物をグラムスケールで調製する。ラメラリン部位とTPP部位と接続には,3~5炭素のアルキル鎖を持つリンカーを介して行うが,リンカー部位とラメラリン部位との結合様式は,強固なエーテル結合型,あるいは生体内で加水分解が可能なエステル結合型の両者を比較検討する。まずは,エーテル結合型TPPラメラリンの合成から始める。ラメラリン骨格化合物Aの還元により得られるアルコールをω-クロロアルキルヨージド(ClCH2(CH2)nCH2I, n=1, 2, 3)を用いアルキル化し,エーテル型のリンカー部分を結合する。なお,リンカー長としては3~5炭素鎖のものを用いる。イソプロピル基の脱保護後,TPPカチオン部位をトリフェニルホスフィンとのホスホニウム塩化によりリンカー部末端に導入し,エーテル結合型TPPラメラリン類の合成を完結する。エステル結合型は,ニトリルAの加水分解により得られるカルボン酸とω-クロロアルカノール(ClCH2(CH2)nCH2OH, n=1, 2, 3)とのエステルから同様の方法で合成する。 合成した化合物は,各種がん細胞株および正常細胞株を用いたアポトーシスアッセイにより細胞種間の選択性を評価する。さらに,蛍光顕微鏡観察や細胞分画/TOF-MS分析によりTPP結合ラメラリン類の細胞質からミトコンドリア内への移行度の確認と局在部位の特定を行う。
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Causes of Carryover |
3環系以上の骨格を持つ中間体を含めた主要な合成化合物は,定期的に抗がん活性などの生理活性を調べる予定であったが,複数のサンプルを並列してバイオアッセイしたほうがデータのばらつきが少なく,生理活性の比較を行う上で信頼性が高いと考えられたので,初年度のサンプルの生理活性試験は次年度に先延ばした。これに対応して,初年度に予定していた細胞培養関連の物品に関しては,細胞の維持に必要なもの以外の物品の購入を次年度以降に行うことに変更した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はサンプル数が整い次第バイオアッセイを行う予定であるので,これに関連した培地やプラスチック器具などの細胞培養関連の物品やトポイソメラーゼ阻害活性試験キット等の酵素阻害活性試験用試薬の購入に未使用分を充てる予定である。
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