2017 Fiscal Year Research-status Report
我が国のワイン産業振興における地理的表示制度の課題と地域連携および大学の役割
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16K14992
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
鹿取 みゆき 信州大学, 経法学部, 特任教授 (70774321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山沖 義和 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (60564713)
桝田 祥子 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (70508150)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地理的表示 / 産地形成 / 産官学連携 / 苗木 / 適性品種 / 千曲川ワインバレー東地区 / 地域活性化 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、本研究を進める国内外の実地調査を続行。 1)千曲川ワインバレー東地区のワイナリーとブドウ農家への訪問聞き取り調査を継続。例:地理的表示制度の指定に際しての課題における、ワイナリーとブドウ農家のクラスターごとの違いも検証。国税庁の本制度のガイドラインに示されているワインと土地・風土を関連づける、生産者が考える要素の抽出を継続。ブドウ農家やワイン生産者が必要とする情報のクラスターごとの検証の継続。2)地理的表示の指定を受けている山梨ワインのブランドの牽引役的な位置づけの山梨県内のワイナリーへの訪問聞き取り調査。3)伝統産地である南仏のモンペリエ大学教授との山梨の産地視察と意見交換。4)本年、地理的表示制度が指定される北海道の行政担当者(北海道庁の各担当者、余市町役場町長および担当者、空知総合振興局職員)および生産者と、本制度指定の課題と制度の運用方法についての調査および意見交換。5)国税庁の審議官および酒税課の課長や担当者へのヒヤリングの継続。地理的表示制度の生産者の理解を深めるための対策についても意見交換。5)北海道の研究機関の研究者(農研機構)との意見交換。6)新興産地であるバージニアの地理的表示制度の導入に際しての大学、行政、生産者の連携と産地形成事例の調査を継続。7)ワインの伝統産地であるフランスにおける産地維持のための大学、行政、生産者の連携スキームの調査。8)新興産地、伝統産地において、適性品種の選定、開発、苗木供給体制の確立のためのそれぞれのスキームの調査。フランスとアメリカの両国において適性品種の研究と苗木供給の中心的役割を果たしているそれぞれの研究所や組織の働きを調査。9)国内の苗木業者の苗の供給体制の調査。10)長野県のワイナリーをイギリスとブルゴーニュ在住のジャーナリスト、およびブルゴーニュの生産者と視察。産地形成の課題について意見交換。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)長野県内におけるワイナリーへのアンケートを行い、ワイン生産者における地理的表示制度の受容度についての実態の把握をしたが、新たな生産者が激増しており、30年度に設立されるワイナリー数は多く、40軒を超える見込みである。こうした状況のなか追加調査も必要になった。ただし、県内のワイン用ブドウの新規就農者の激増により、実態の把握が難しくなっている。 2)30年度は北海道が新たに地理的表示として指定される見込みである。抜本的な制度の見直し後、初の指定となり、北海道における制度運用について追加で検証する必要が生じた。 3)ワイナリー設立の動きは長野県と北海道だけでなく、この1,2年は北東北で俄に活発化している。日本全国でのワイナリー設立数は昨年が25軒、今年は30軒とも言われている。長野県のみならず、北海道、北東北、西日本、大阪の産地形成における産官学連携の動きを把握しなければならないが、動きが早急である。 4)平成29年度内に海外出張に出かける予定だったが、先方と日程調整が合わず、平成30年度に延期した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)長野県内のワイナリーに対しての追加調査実施:千曲川ワインバレー東地区では平成30年、5軒のワイナリーが設立される見込みで、産地化の動きの活性化が予想される。今後は生産者、流通、行政など異なるクラスターでの知見の共有と意見交換による産地の概念についてのコンセンサスを得るという産地化のスキームを検証し、連携体制のモデルを構築する。2)さらに長野県内の新規就農者における地理的表示制度の受容度と産地形成における当クラスターの位置づけの検証。製造免許をもたずとも、委託醸造によってワインを販売するクラスターの登場とその拡大による産地形成の実態の変化を検証する必要がある。3)千曲川ワインバレーを含む長野県内における適性品種の検証とその知見共有のためのスキームを検証する。4)フランスとアメリカの苗木供給体制とその産地化への影響についても調査を続ける。5)気候変動が適性品種および産地形成にも影響を与えていることについても新たな仮説が得られたため、気候変動を考慮した地理的表示制度の変革の可能性を検証する。6)長野県と似たような気象条件を持つ、スペインのリアス・バイシャスやニューヨーク州における適性品種選定と産地形成について調査する。
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Causes of Carryover |
産地形成に重要な役割を果たす苗木の輸入時の植物検疫所の検疫制度が平成30年1月31日に緩和され、今後の苗木供給についての動向調査は本研究に必須である。また、平成30年、北海道が地理的表示の指定を申請中ですでにパブリックコメントの募集も始まっている。北海道における本制度の運用を検証することも本研究には重要である。また本研究に関連する地理的表示の有用性及びその指定に向けた手続きに関して、関東信越国税局長、山形酒造組合会長による講演を計画。諸般の事情から、年度明けに開催予定の長野県ワイン協会総会の基調講演として行うべく調整中。上記の理由により研究期間の延長を行い、必要となる予算を次年度に繰り越しした。
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