2017 Fiscal Year Annual Research Report
An economic analysis of agricultural land use in Japan
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16K14993
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 順一 京都大学, 農学研究科, 教授 (80356302)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 慎一 京都大学, 農学研究科, 助教 (20434839)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 農業経済学 / 計量経済学 / 進化ゲーム理論 / 処理効果分析 / 日本型直接支払制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際競争力を失った農業を財政的に支援する1 つの拠り所は,農業および農村がもつ多面的価値である。これは国内農業の保護を前提としているが,経済的損失を敢えてしても維持しなければならない非市場的価値の存在が,「農地・水・環境向上対策」を含む日本型直接支払制度を推し進める1つの基本理念となっている。 本研究の分析結果によれば,「向上対策」の導入により,農業用水路,河川・水路,農地,ため池・湖沼に対する保全活動は明らかに改善しており,クラウディング・アウト効果(補助金等の受領により,実施主体の資源保全に対する内因的なモチベーションが低下する現象)は顕在化していない。いいかえれば,少なくとも本研究の対象地域(滋賀県)では,向上対策が農地の継続的な利用と多面的機能の発揮に多大な貢献をなしていると断言できる。 また計量分析の結果は,集落内にソーシャル・キャピタルが蓄積され,構成員間の結束が強固である集団ほど,「向上対策」に参加する可能性が高まることを示している。共同活動に関して「事前準備」が出来ていた集落は,施策への参加のハードルを容易にクリアすることができたのである。一方,新たに参加した集落が,エネルギーの大半を集落の合意形成に費やすようであれば,「向上対策」の効果の発現は期待できない。「向上対策」は,あくまで共同体が長年培ってきた自律的な機構や相互扶助の精神をサポートすることによって,その実をあげることができるからである。
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Research Products
(2 results)