2017 Fiscal Year Research-status Report
地域継業のためのキャパシティ・ディベロップメントモデルの確立
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16K14999
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
内平 隆之 兵庫県立大学, 地域創造機構, 教授 (70457125)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 継業 / セットアップ / 地域連携 / 学金融連携 / 古民家 / キャパシティ・ディベロップメント |
Outline of Annual Research Achievements |
地域継業とは,地域で引き継がれてきた地域固有性の高い生業を,第3者となる次世代に引き継ぐことを指す.本研究では,地域継業を促進することが地域の持続可能性を高めるという観点から,キャパシティ・ディベロップメント(以降略称CD)の枠組みを発展させ,地域連携による社会実験を通じて継業者獲得の事業マネジメントを進めることで,「地域継業CD モデル」を実証的に明らかにすることを本研究の目的とする.平成30年度は、前年度の社会実験の知見と,事例・理論研究の知見を突き合わせ,随時,継業希望者や地域関係者らと共有し,空白期間の地域継業の課題,課題解決のための組織のあり方,地域連携組織のコアスキルを分析・考察し,支援モデルを多角的に検討した.具体的には、第1に、社会実験として昨年度着手した、神河町の廃業茶園で実施した学金融連携による継業セットアッププロジェクトを実施し、無事に継業者に引き継ぐことに成功した。この成果の成功要因と課題を分析するために、キーパーソンへのインタビュー調査を実施し、学金融によるセットアップモデルの有効性を再検証した。第2に、古民家を再生しサブリースしながら、暮らしを継承するビジネスを展開している兵庫県たつの市と福岡県津屋崎市のまちづくりNPOと連携した不動産業の先駆的な取り組みを比較調査し、継業空白期間に対するリスクヘッジの方法など,地域連携によるセットアップモデルを明らかにした。これらの結果から、古民家が空き家となる前に事前に相談し、最低限の投資で継承者に引き継ぐまでの空白期間にうまれる荒廃を低減する新たなエコシステムの必要性が浮き彫りとなった。次年度は、この問題の解決に資する学金融連携による古民家セットアッププロジェクトを兵庫県西播地域において実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進呈している理由は以下の通りである。第1の理由は、廃業茶園のセットアッププロジェクトが成功し、継業者に引き継がれたため、成功要因と課題分析が半年前倒しで実施である。このため、成果をとりまとめることも前倒しなり、共著作「住み継がれる集落をつくる: 交流・移住・通いで生き抜く地域」(学芸出版社2017)と、共著作「地域固有性の発現による農業・農村の創造」(筑波書房2018)において公表することができたからである。第2の理由は、当初の予定では、2017年度は、古民家のサブリース先進事例の比較研究にとどまる予定であったが、事例調査対象となった兵庫県たつの市の団体から、古民家を活用した地域継業のための地方創生拠点の形成や空き家相談センター等の設置などの支援相談があった。このため、古民家を継承者に引き継ぐまでの空白期間にうまれる荒廃を低減する新たなエコシステムを構築する新たな社会実験に着手でき、最終年次での学金融連携によるセットアップモデルの有効性が比較検証できるからである。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間で得られた成果をもとに,地域継業CD モデルの確立に取り組み,広く情報共有が可能なかたち(本,冊子など)で成果をまとめていく.まず、1)茶園の継業セットアップの事例を中心に、担い手への追跡調査を行い,ナレッジマネジメントの手法で、社会実験の成果を体系的に整理する.特にセットアップ過程から分析し,組織や組織基盤の役割について考察する.次に、2)古民家活用セットアップの先進事例をもとに明らかになった要因を踏まえ,まちづくりNPOや不動産業者と言った支援組織がもたらすべき影響を個人・組織・組織基盤の3つの層で整理し,継業支援に持続的に取り組むための体制を構築する方法を明らかにする.最後に、3)理論研究として、1)と2)の知見を合わせて,包括的な地域継業CD モデルを理論的に確立する.
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Causes of Carryover |
廃業茶園での継業セットアップの社会実験が成功し短期間で終了したため、支援謝金が当初の予定より大幅に少なくて済んだ。また、年度末に公開研究会をおこなったため、インタビュー調査の音声反訳の発注が年度またぎとなるため次年度に持ち越しとなった。次年度の古民家活用のセットアップシステム構築のための、社会実験費用や先進事例の現地調査費に充てるとともに、2018年度に聞き取り調査等の音声反訳を一括発注する使用計画である。
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