2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K15011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
芋生 憲司 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40184832)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイオ燃料 / バイオマス / エタノール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、セルロース系バイオマスからのエタノール製造におけるエネルギー消費とコストの低減を目的として、加熱圧縮プロセスによる酵素糖化前処理技術を開発する。加熱圧縮処理は試料をピストンで加圧し間隙をなくすことにより試料中の水を液体の状態で維持することで、水分30%前後の低水分の状態でも水熱反応を可能とする処理方法である。様々なセルロース系バイオマスに対して加熱圧縮処理を行い、酵素糖化前処理としての効果を評価した。加熱圧縮処理は草本バイオマスの稲わら、エリアンサスや広葉樹のユーカリに対しては高い酵素糖化前処理効果を持つことが確認された。一方、タケや針葉樹のスギに対しての効果は低かった。 加熱圧縮処理における各成分の挙動を把握するために、密閉式の処理装置を製作した。密閉式の加熱装置では、従来の準密閉系加熱装置では回収できなかったヘミセルロース由来のC5糖の回収率が50%まで向上し、反応圧力も16MPaから4MPaまで下げることが可能であることを確認した。また、加熱圧縮処理後の試料の水分が増加していることから、加熱圧縮処理では脱水反応が起こっていることが示唆された。 ヘミセルロース由来成分の分解挙動の解明のため、ヘミセルロース由来の過分解物であるフルフラールの生成量を分析した。その結果、フルフラールの生成量は失われたC5糖から生成すると考えられる量の10%以下であることが確認された。そのため、加熱圧縮処理後の試料に含まれる発酵阻害物質は、フルフラール以外の成分であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の結果、セルロース成分に対する高い前処理効果が得られたが、ヘミセルロースの過分解によって発酵阻害物質が生じた。発酵阻害物質であるヘミセルロース由来の過分解物のフルフラールの生成量を分析したが、フルフラールの生成量は失われたC5糖から生成すると考えられる量の10%以下であることが確認された。したがって、加熱圧縮処理後の試料に含まれる発酵阻害物質は、フルフラール以外の成分であると考えられる。加熱圧縮処理を導入したバイオエタノール製造のエネルギー収支の評価には、この物質を同定し、物質の除去もしくは過分解の抑制法を研究する必要がある。そのため、バイオエタノール製造のエネルギー収支の評価に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
加熱圧縮処理により生じる発酵阻害物質を同定し、物質の除去もしくは過分解の抑制法を検討する。加熱圧縮処理物は水分が30%と低いという特徴を生かし、溶媒を用いた発酵阻害物質の除去方法を検討する。そして、発酵阻害物質の除去工程が、後段の酵素糖化工程や発酵工程に与える影響を評価する。これらの結果をもとに加熱圧縮処理を導入したバイオエタノール製造のエネルギー収支の評価を行う。
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Causes of Carryover |
研究の結果、セルロース成分に対する高い前処理効果が得られたが、ヘミセルロースの過分解によって発酵阻害物質が生じた。この物質を同定し、物質の除去もしくは、過分解の抑制法を研究する必要があり、バイオエタノール製造のエネルギー収支の評価が次年度に繰り越されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
加熱圧縮処理により生じる発酵阻害物質を同定し、物質の除去もしくは過分解の抑制法を検討する。その後、エネルギー収支の評価を行う。
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Research Products
(2 results)