2016 Fiscal Year Research-status Report
Effect of gut micorbiota of Alzheimer's disease by using gnotobiotic technique
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16K15061
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
森田 英利 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (70257294)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村山 洋 麻布大学, 生命・環境科学部, 准教授 (20301781) [Withdrawn]
須田 亙 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (20590847)
菊水 健史 麻布大学, 獣医学部, 教授 (90302596) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アルツハイマー型認知症 / 腸内細菌叢解析 / ノトバイオート技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー型認知症と診断され、認知障害ではなくかなり重篤な患者10名の糞便を採取した。またほぼ同じ年齢層で日常生活をし認知障害も含めて症状のみられない4名の糞便を採取した。各糞便から細菌ゲノムを精製し、次世代シークエンサーMiSeq(Illumina社)を用いて細菌ゲノムの16SリボソームRNA遺伝子のV3-V4領域の塩基配列を決定した。すべてのサンプルのリード数を確認して問題がなかったので腸内細菌叢の網羅的解析を行った。14名のサンプルにおいて主座標分析法の一つであるUniFrac解析を行った結果、その両者は異なるクラスターを形成していた。その理由は、認知症患者腸内細菌叢に既知の菌種以外の細菌が多く存在していることに起因するものであった。腸内細菌叢を明らかにした認知症患者1名の腸内細菌叢(糞便)をC57BL/6系統の無菌マウスに経口投与し、ノトバイオートマウスを作製した。その後、2週間ごとの継時的に糞便を採取し網羅的な細菌叢解析と、10週齢以降は認知行動に関する試験を行った。その結果、30週齢の健常者腸内細菌叢によるノトバイオートマウスでは新奇の物体、あるいは新奇の場所に対する探索行動が増加し、正常な認知機能が確認されたが、認知症患者腸内細菌叢によるノトバイオートマウスでは場所認知行動実験において認知能力低下が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グリセロールストックによって-80℃で保存した認知症患者の糞便から細菌のゲノムを抽出後、網羅的16S リボソームRNA遺伝子解析を行い、高齢な健常者腸内細菌叢との比較を行った。さらに4週齢C57BL/6の無菌マウスに認知症患者腸内細菌叢を経口投与したノトバイオートマウスと、高齢な健常者腸内細菌叢を経口投与したノトバイオートマウスを作成し、10週齢~30週齢までの認知行動を物体認識試験および場所認識試験により実施した。また、これらのマウスを解剖し、脳を中性緩衝ホルマリンで固定後、ヘマトキシリン・エオジン染色(HA染色)および抗Aβ42抗体を用いた免疫染色(IHC)を実施し、海馬と皮質を観察した。 その結果、認知症患者腸内細菌叢の網羅的16Sリボソーム RNA遺伝子を用いたUniFrac解析において、同年齢層の健常者腸内細菌叢と大きく異なっていた。その根拠は、認知症患者腸内細菌叢に相同性が97%以下にアサインされる菌種が多く存在していたからである。UniFrac解析による細菌叢解析では、既知菌種や同一菌種でもその構成比が大きく違えば、異なるクラスターを形成するが、今回の結果は、根本的な細菌叢の違いを意味するものであった。 また、30週齢の健常者腸内細菌叢によるノトバイオートマウスでは新奇の物体、あるいは新奇の場所に対する探索行動が増加し、正常な認知機能が確認された。しかし、認知症患者腸内細菌叢によるノトバイオートマウスは、特に場所認知行動実験で変化した物体と変化していない物体の探索時間に差異が認められず、認知能力の低下がうかがえた。脳を組織学的に検索したが、両群のすべての個体で神経細胞の脱落や変性などの著変が認められなかった。抗Aβ42抗体を用いた免疫染色においても、陽性所見は得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
物体の場所や物体の特徴を記憶していた場合、新奇の物体に対する探索時間が増加し、変化していない物体に対する探索時間が減少する。健常者腸内細菌叢によるノトバイオートマウスは物体の場所と特徴を認知記憶していたが、認知症患者腸内細菌叢によるノトバイオートマウスは物体の位置に対する認知記憶が障害されていた。また、Aβの蓄積がみられなかったことから、アルツハイマー型以外の認知障害の理由についても検討していきたい。 認知症患者群と健常者群では腸内細菌叢が明らかに異なることから、その代謝産物に違いを見出すため、認知症患者腸内細菌叢によるノトバイオートマウスの糞便のメタボローム解析を実施し、認知症における既知の物質との相関について考察する予定である。
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