2018 Fiscal Year Research-status Report
Cryo-TOF-SIMS/SEMによる根圏効果のサブミリスケールの可視化
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16K15075
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村瀬 潤 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30285241)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 根圏 / 水稲 / 微生物 / 原生生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに確立したミニ根箱システムを用いて、水稲、微生物混合系での土壌原生生物が水稲根圏環境に及ぼす影響を検証した。水田土壌の土壌懸濁液を孔径2.0umのヌクレオポアフィルターでろ過して原生生物を物理的に除去した細菌懸濁液を準備した。春日井氏液を含む軟寒天(0.7%)にこの細菌懸濁液を加えるとともに、捕食性原生生物の影響を調べるために、同じ水田土壌から分離した繊毛虫(Colpoda sp.)のシストを添加した。これを培地としたガラス製のミニ根箱で水稲幼苗を栽培した。10日間の栽培の後、軟寒天培地、水稲根を回収した。軟寒天培地中の細菌を蛍光顕微鏡により観察、計数するとともに、PCR-DGGEによる細菌群集の解析を行い、繊毛虫の接種が根圏細菌に与える影響を解析した。 培地中の細菌には、単体で存在するものと集合体を形成するものが観察され、集合体の数は繊毛虫の接種によって3倍程度増加した。一方、単体で存在する細菌数は繊毛虫の接種によって低下する傾向が認められた。水稲根と培地から抽出したDNAを対象としたDGGEバンドパターンには、水稲由来のバンド以外に大きな違いは認められなかったが、繊毛虫の接種の有無によりバンドパターンは大きく異なった。以上のことから、繊毛虫の捕食作用は水稲根圏に生息する細菌群集の存在形態や群集構造を支配する重要な生物因子であることが示唆された。一方で、原生生物の接種の有無によって、水稲根の生長や形態に変化は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来はCryo-TOF-SIMS/SEMシステムを用いて根圏における化学環境の可視化を進める予定であったところ、装置の故障が重なり、その修理対応のため予定していた研究が滞っている。また、無菌的に生育したイネ幼苗は、その後の栽培において予想外に細菌、原生生物の外部からの混入が起こりうることが明らかとなり、無菌状態でのイネの継続的な栽培条件の確立に時間を要している。それに伴い、無菌イネの微生物接種実験の条件の見直しと再試験を迫られている。
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Strategy for Future Research Activity |
Cryo-TOF-SIMS/SEMシステムの修理には多額の費用の時間が予想されるため、化学環境の解析については期間内に一定の制限を受ける可能性がある。修理が済めば速やかに現時点で保存している試料の測定に着手するが、修理に時間がかかる場合には、方針の変更も視野において研究を進める。具体的には、無菌イネの栽培と微生物接種実験について再検討を進めるとともに、水稲根圏における微生物群集の解析をさらに詳細に進め、微生物環境としての水稲根圏の特徴を明らかにする。
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Causes of Carryover |
Cryo-TOF-SIMS/SEMシステムの故障が重なり、その修理対応のため予定していた研究が滞っているため、研究費執行の遅れを余儀なくされている。修理が済めば速やかに測定に着手する。修理に時間がかかる場合には、無菌イネと微生物接種実験について再検討を進めるとともに、水稲根圏における微生物群集の解析をさらに詳細に進める。ガラス器具、プラスチック類、試薬類の購入、およびシークエンスの依頼分析等に充当する。
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Research Products
(2 results)