2016 Fiscal Year Research-status Report
超高齢・都市社会に対応した新たな都市近郊林管理の方法論(SURF)の開発
Project/Area Number |
16K15081
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
高山 範理 国立研究開発法人森林総合研究所, 森林管理研究領域, 主任研究員 (70353753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八巻 一成 国立研究開発法人森林総合研究所, 北海道支所, グループ長 (80353895)
松浦 俊也 国立研究開発法人森林総合研究所, 森林管理研究領域, 主任研究員 (00575277)
平野 悠一郎 国立研究開発法人森林総合研究所, 林業経営・政策研究領域, 主任研究員 (00516338)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 都市近郊林 / 管理 / 戦略 / 過剰利用 / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢・都市社会を迎え、癒し・健康づくりの場として「都市近郊林」に対する国民の期待が高まっている。すでに高尾山・筑波山などの一部の都市近郊林では、利用圧と森林資源の保全の両面に配慮しつつ、①利用者の集中等による混雑や森林資源・生態系への極端な負荷といった短期的問題の発生を回避しつつ、②森林に対する社会的要請や施業で生じた林相等の変化のような長期的変動に対応できる新たな管理方法が求められている。本研究では、短期的問題・長期的変動の両者に柔軟(レジリエント)に対応しながら、魅力を最大限に発揮でき、同時に森林資源・生態系の持続的な保全を可能とする方法論(都市近郊林管理戦略:SURF)を開発・提案することが目的である。 森林における活動内容(森林浴、トレイルラン、スポーツ、教育等)に応じて、適した森林空間の属性は異なる。例えば、高齢者の森林浴利用の場合、樹種や林齢、樹木密度、森の香り(森林揮発物質)、地形傾斜といった要因がその効果に大きく関わる。そこで、平成28年度は質の高い様々な森林体験に求められる地理的・植生的条件の基準について、活動内容と林相や地形、アクセス等との関係を、既往の研究知見をもとに整理するため、これまでの関連する研究知見を収集・整理した。作業に当たっては、森林浴、トレイルラン、スポーツ、教育等といった活動内容ごとに分類し作業を進め、整理を進める中で出てくると思われる他の重要な項目についても検討した。 一方、従来、主に国内外の国立公園や原生地域を含む自然度の高い森林で用いられてきたROSやVAMPといった計画ツールを参考に、都市近郊林への多様な利用者の要請に対応するための空間区分手法について検討した。さらに、高尾山等に関する既存データ(森林情報、利用者数、人口将来予測等)を収集し、森林における利用行動の実態を捉えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標は、超高齢社会において、レクリエーションや癒し健康維持活動、生涯教育等に都市近郊林を有効に活用するために、施業や利用によるインパクト、利用者の要請の変動等が及ぼす影響について、活動内容毎に将来的な予測を行い、柔軟かつ最適な管理戦略(都市近郊林管理戦略:SURF)を提案することである。 平成28年度は、森林の活動内容ごとに求められる地理的・植生的評価基準の整理をおこなった。森林における活動内容(森林浴、トレイルラン、スポーツ、教育等)に応じて、適した森林空間の属性は異なる。例えば、高齢者の森林浴利用の場合、樹種や林齢、樹木密度、森の香り(森林揮発物質)、地形傾斜といった要因がその効果に大きく関わる。そこで、質の高い様々な森林体験に求められる地理的・植生的条件の基準について、活動内容と林相や地形、アクセス等との関係を既往の研究知見をもとに情報の整理をおこなった。これらのことから、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、森林および社会の変動を考慮したレジリエントな森林管理戦略立案手法の開発を行う。レジリエンスを考慮するためには、時間軸の導入が不可欠である。そこで、施業活動や利用集中によるインパクト、人口構造の変化といった要因が森林体験の質に短期的、長期的に与える影響を予測する手法を開発する。そして、前年度に行った空間属性の整理および空間区分手法を融合させる。森林空間の将来変動およびそれに対して講ずべき対策(森林施業、利用規制・誘導、施設整備等)を空間的に関連付けることにより、管理戦略として提示するための手法開発を行う。また、前年度に引き続き、必要なデータの収集を行う。
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Causes of Carryover |
GPSを用いた調査および現地アンケート調査が予定していた平成28年度から平成29年度に変更になったため、その分の物品購入および調査費用等が次年度繰り越しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度にGPSを活用した利用者行動追跡調査、トレイルランニングを行う人々の意識・行動調査を行い、森林における利用行動の実態を捉える。
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