2016 Fiscal Year Research-status Report
植物ホウ酸チャネルのER exitを制御するカーゴレセプターの同定
Project/Area Number |
16K15082
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
高野 順平 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (70532472)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小胞輸送 / ER exit / ホウ酸 / チャネル / 花粉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、シロイヌナズナにおいてSPOT1/KNS3と呼ばれる機能未知タンパク質がホウ酸チャネルのカーゴレセプターとして小胞体から細胞膜への輸送の初期段階を制御することを証明することを目的としている。本研究の端緒は、GFPタグしたホウ酸チャネルGFP-NIP5;1が根の表皮細胞において小胞体にとどまる変異株を単離し、その原因遺伝子をSPOT1/KNS3と同定したことにある。SPOT1/KNS3の変位株は花粉の外壁構造に異常を持つことで知られていた。本年度は、NIP5;1のホモログにあたるNIP1;2, NIP6;1, PIP2;1の局在を変異株の根の表皮細胞において解析し、GFP-NIP1;2とGFP-PIP2;1は正常に細胞膜に局在するが、GFP-NIP6;1は小胞体に留まることを明らかにした。NIP6;1はホウ酸チャネルであることから、アクアポリンファミリーの中でもホウ酸チャネルがSPOT1/KNS3に輸送されることが示唆された。また、小胞子(花粉細胞の分化前段階)において発現するホウ酸チャネルNIP7;1の細胞内局在を解析するため、NIP7;1-GFPを発現する形質転換シロイヌナズナの作出を進めた。さらに、SPOT1の細胞内局在解析を行うため、各種タグ付きのSPOT1/KNS3を発現する形質転換シロイヌナズナを作出した。これらのうちいくつかはspot1/kns3変異株において花粉の外壁異常を相補した(回復させた)ため、今後の局在解析に有用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、NIP5;1のホモログにあたるNIP1;2, NIP6;1, PIP2;1の局在を変異株の根の表皮細胞において解析し、GFP-NIP1;2とGFP-PIP2;1は正常に細胞膜に局在するが、GFP-NIP6;1は小胞体に留まることを明らかにした。NIP6;1はホウ酸チャネルであることから、アクアポリンファミリーの中でもホウ酸チャネルがSPOT1/KNS3に輸送されることが示唆された。そこで、小胞子(花粉細胞の分化前段階)において発現するホウ酸チャネルNIP7;1の細胞内局在を解析するため、NIP7;1-GFPを発現する形質転換シロイヌナズナを作成している。しかしながら、spot1/kns3変異株に比較的高濃度のホウ酸を与えても花粉外壁の異常は回復しなかったことから、花粉の表現型に関しては、ホウ酸チャネルの他にも要因があるものと考えられた。 また、SPOT1の細胞内局在解析を行うため、各種タグ付きのSPOT1/KNS3を発現する形質転換シロイヌナズナを作出した。SPOT1はN末端近くにsignal peptide, C末端近くに膜貫通領域をもつが、signal peptide直後にmCherryを挿入したmCherry-SPOT1はspot1/kns3変異株の表現型を相補することができなかった。他様々な位置にmCherryを挿入した融合タンパク質が機能相補できるか現在解析中である。一方、signal peptide直後にcmycを挿入したcmyc-SPOT1は花粉の外壁異常を相補した(回復させた)ため、今後の局在解析に有用であることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに代表者等はベンザミアタバコの一過的発現系において、mCherry-SPOT1が小胞体とゴルジに局在することを明らかにしている。mCherry-SPOT1はspot1/kns3変異株の表現型を機能相補できないことが明らかになったが、局在性に関しては本来の性質を維持している可能性がある。今後は、機能相補するcmyc-SPOT1を発現する形質転換シロイヌナズナを用いた免疫染色によって、SPOT1の細胞内局在解析を行う。Bip抗体を併用することで小胞体での局在を、蛍光タンパク質を利用したゴルジマーカーラインとの掛け合わせによりゴルジでの局在を確認したい。mCherry-SPOT1とcmc-SPOT1で局在性が一致した場合は、SPOT1がERとゴルジ体を行き来するかどうかを検証するため両者を用いる。SPOT1のC末端細胞質側領域である9アミノ酸(PRAPKPIN)にCOPIIおよびCOPIコートタンパク質との結合配列が含まれていると予想される。そこで、9アミノ酸それぞれをアラニンに置換したmCherry-SPOT1をベンザミアタバコの葉に一過的に発現させ、局在を観察する。COPIIコートとの結合配列の変異でERに、COPIコートによる認識配列の変異でゴルジ体に局在が偏ることが期待される。 続いて、SPOT1とNIP5;1およびCOPI/IIコートタンパク質との相互作用解析を主に BiFC 法とクロスリンカーを用いた共免疫沈降法によって検証する。
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Causes of Carryover |
代表者はH28年4月に北海道大学から大阪府立大学に移動した。その後研究環境のセットアップに時間を要し研究開始が遅れ、消耗品等の購入が予定よりも減った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
免疫染色や共免疫沈降などの実験に高額な消耗品の購入を必要とする。また、多数の形質転換植物の整備に多量の消耗品の購入を必要とする。積極的に対外発表するため旅費も使用する。
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Research Products
(2 results)