2016 Fiscal Year Research-status Report
超機能性アルコール系有機ハイドライド法の開発と芳香核還元反応への応用
Project/Area Number |
16K15100
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
佐治木 弘尚 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (50275096)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 白金炭素 / 水素キャリア / アルコール / 水 / 水素製造 / ケミカルハイドライド / メチルシクロヘキサン / マイクロ波 |
Outline of Annual Research Achievements |
白金炭素存在下、イソプロパノール、水と弱塩基が共存すると、「芳香族フッ素化合物の脱フッ素化 (Adv. Synth. Catal.2012, 354, 777)」や「芳香環の重水素標識反応 (Adv. Synth. Catal.2013, 355, 1529)」が進行する事を明らかにするとともに、ロジウム炭素やパラジウム炭素を触媒とした、水中で進行するアルコールの脱水素酸化反応を確立している(Green Chem. 2014, 16, 3439; Adv. Synth. Catal. 2015, 357, 1205)。また、本研究の申請時には、水中イソプロパノール存在下、白金炭素を触媒とした芳香核還元反応が、ステンレススチール(SUS304)容器中で特異的に進行する事を確認し投稿中であった(Adv. Synth. Catal. 2015, 357, 3667)。 H28年度の研究では、SUS304による核還元反応に対する加速効果が鉄元素によるものであることを解明するとともに、水素の外部添加を必要としない、穏和な条件下で進行する芳香核還元反応として確立した(投稿準備中)。この反応は、有機ケミカルハイドライドとして注目されているメチルシクロヘキサン-トルエン系の、還元(水素貯蔵)工程に大きく寄与するものである。 また水とアルコールを組み合わせると、白金族触媒存在下脱水素反応が進行し水素を取り出すことができる。メタノールの場合にはギ酸を経由して3分子の水素が取り出される。H28年度は加熱反応によるバッチ式水素発生法とともに、マイクロウエーブ照射によるフロー式連続反応を検討した。いずれの反応においても水素の生成が確認され、研究目的達成に向けた指標を確立することができた。なおマイクロウエーブフロー反応に関しては、電波法との関連で、共振周波数を調整した触媒カートリッジの新たな開発が必要である事が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「1 水を媒体としたアルコール類の活性炭担持型触媒的脱水素反応の確立」一級アルコールからの脱水素はアルデヒド経由で進行するが、水素の共存により一部脱CO反応が併発する。この反応の回避を目指して、圧力コントローラーを利用した手製装置を開発するとともに、反応系への有機水素スカベンジャーの添加を検討して一定の成果を挙げ論文投稿準備中である。また中性条件下で作用する触媒も見いだしており、アルデヒドの活性化を回避した脱COの無い反応系の構築も期待される。 「2 MeOHとIPAを基質(溶媒)とした水系フローシステムの開発研究(Ⅰ)」不均一系触媒的フロー反応では、第一級アルコールの脱水素で生じるアルデヒドが触媒と接触する時間が短いため、脱COの回避が期待される。加熱とマイクロウェーブを使ったフロー反応で、いずれも水素ガスが生成する事を確認している。なお、マイクロウエーブフロー反応では、共振周波数を調整した触媒カートリッジの新たな開発が必要である事が明らかとなった。 「3 アルコールから脱水素した水素による芳香核還元反応(Ⅰ)」SUS304による核還元反応に対する加速効果が鉄元素によるものであることを解明するとともに、穏和な芳香核還元反応として確立した(投稿準備中)。この反応は、有機ケミカルハイドライドとして注目されているメチルシクロヘキサンのトルエンからの簡便な合成法として、国が推進する次世代エネルギープロジェクトへの貢献が期待される。 以上、1と2は「概ね順調」に進行しており3は「計画以上」に進行している。しかし、触媒カートリッジの新規開発が必要になるなど、解決すべき新たな問題も発生した。さらに、白金炭素、IPA、重水を組み合わせた「飽和脂肪酸の多重重水素化」と「重水素標識ジシロキサンの合成」も論文投稿し、水を媒体としたアルコール類の活性炭担持型触媒的脱水素反応の有効性を示す事ができた。よって総合的に「概ね順調」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
「メタノールとイソプロパノールを基質(溶媒)とした水系フローシステムの開発研究(Ⅱ)」 平成28年度の研究成果から脱COを回避するための2つの基本的な条件、「水素の反応系外への除去」と「アルデヒドの活性化を回避できる中性条件下で効率良く脱水素する方法論の開発」が明確になった。バッチ及びフロー反応システムの最適化をそれぞれ継続して、使用したアルコールをほぼ定量的に水素ガスに変換する方法論として確立する。また、マイクロウエーブフロー反応に関しては、上述したように、触媒カートリッジの新たな開発が必要である。カートリッジの材質(ガラスやポリマー)、内径、形状等に関して詳細に検討し、電波法に準拠した適切で効率の高いカートリッジを開発する。 「アルコールからの脱水素により製造した水素による芳香核還元反応(Ⅱ)」 本項目は、H28年度の研究により当初の予定以上に進展しているので、H29年度は、論文投稿や学会での精力的な発表とともに、トルエンからメチルシクロヘキサンへの変換法、すなわち、「有機ケミカルハイドライドとしての再利用サイクルへの貢献」に重点を置いて研究を進める。 ①H28年度の研究により鉄の添加が極めて効率的である事が明確になったので、基質適用生の高い簡便な手法であることを示すとともに、論文としてまとめ投稿する。②トルエンを基質としてメチルシクロヘキサンの簡便合成法としての実用性を証明する。③「本核還元の反応機構」を明確にする。特に電子移動やラジカル反応の関与が推測されるので、一電子補足剤やラジカルスカベンジャーの添加効果を詳細に検討すると共に、反応中間体の単離などを可能な限り試みる。
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Research Products
(16 results)