2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K15109
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山田 健一 九州大学, 薬学研究院, 教授 (60346806)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 薬学 / 分析科学 / ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
酸化ストレスは様々な疾患の発症・進展に密接に関与している。しかしこの酸化ストレスを誘発するには、NADHやコハク酸など、還元物質の蓄積が必要である。つまり、還元ストレスが、後の酸化ストレス・生体内組織の障害を惹起する「疾患発症の開始点」であると申請者らは考えた。そこで本研究では、「ミトコンドリア内における還元ストレス検出蛍光プローブの開発とその評価」を目的とした。そのため、1)酸化還元電位を制御した還元ストレス検出蛍光プローブ開発、2)培養細胞モデルを用いた実証実験を、達成目標とした。 以上の背景のもと、本年度は以下の研究を行った。 1)酸化還元電位を制御した還元ストレス検出蛍光プローブ開発 ミトコンドリアでの還元ストレスを測定可能な蛍光プローブを開発し、その評価を行った。この化合物は、通常のROSとは反応せず、還元物質、特に還元型ユビキノンと鋭敏に反応することが分かった。 2)培養細胞モデルを用いた実証実験 合成したミトコンドリア移行性還元ストレス蛍光プローブを用いて、培養細胞モデルを用いて検討した。ミトコンドリアでの還元刺激として、解糖系の基質のひとつであるリンゴ酸あるいはピルビン酸を添加した。その結果、添加10分以内に、還元ストレス検出プローブの蛍光強度は有意に上昇した。また、ミトコンドリア染色蛍光プローブとの共染色により、開発したプローブは、ミトコンドリアに局在していることがわかった。さらに非常に興味深いことに、この時点では、ミトコンドリアでのROS検出プローブの蛍光強度は上昇せず、24時間後にようやく亢進した。すなわち、ミトコンドリア解糖系の基質を添加することにより、酸化ストレスに先立って還元ストレスが亢進していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
還元ストレスをターゲットとしたプローブ開発はこれまでほとんど行われていない。我々は、本年度までにミトコンドリアでの還元ストレスを評価できるプローブの開発に成功した。そこで、次年度以降は、実際に細胞実験を用いた実証実験を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度までに、還元ストレスをターゲットとしたプローブ開発に成功した。そこで、平成29年度は、以下2点を中心に検討する。 1)酸化還元電位を制御した還元ストレス検出蛍光プローブ開発 培養細胞モデルでの評価を継続するために、前年度までに選択した還元ストレス選択性蛍光プローブの大量合成を行う。また、本化合物の物性評価も併行して進める。 2)培養細胞モデルを用いた実証実験 前年度までに新たに開発した還元ストレス検出蛍光プローブを用いて、高グルコースモデル、さらにパルミチン酸添加による脂肪蓄積細胞などに適用し、本手法の有用性を検証する。一方で、興味深いことに予備検討の結果、血清飢餓モデルでも蛍光強度が大きく上昇した。そこで、これら種々の培養細胞モデルを用いて、還元ストレスおよび酸化ストレスとの関係を明らかにし、本研究を総括する。
|
Research Products
(2 results)