2016 Fiscal Year Research-status Report
タンデム型2ポアカリウムチャネル作用薬超高効率探索システムの創成
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16K15128
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
今泉 祐治 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 教授 (60117794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山村 寿男 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 准教授 (80398362)
鈴木 良明 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 助教 (80707555)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 薬理学 / 薬学 / 生体分子 / 生物物理 / 創薬 / 細胞死 / ハイスループットスクリーニング / イオンチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
①Ba2+超感受性新規変異型K+チャネルの作成:Kir2.2のBa2+感受性はKir2.1と比較して10倍高いこと(それぞれ2 μMと16 μM、Schram et al., 2003)。KirファミリーにおいてBa2+感受性に寄与すると報告されているアミノ酸残基のうち、Kir2.2に保存されている残基について点変異導入を行った。得られた変異体のうち1つをHEK293細胞に導入し、ホールセルパッチクランプ法によりBa2+感受性を調べたが、有意な変化は見られなかった。
②Ba2+超感受性新規試験細胞系の樹立:Kir2.2+Nav1.5の定常発現試験細胞を作製して、MTT法によりBa2+感受性の検討を行ったところ、IC50はおよそ2μMであり、従来のKir2.1+Nav1.5発現試験細胞(36μM)より10倍程度Ba2+感受性が高いことが判明した。
③タンデム型2ポアK+チャネル開口あるいは阻害作用を示す化合物の高効率探索細胞系の確立:タンデム型2ポアK+(K2P)チャネルは、1チャネル分子内に2つのイオン孔を有し、2分子が会合して1つのチャネルを形成する。背景電流として静止膜電位調節に寄与しているものが多く、現在15種類のサブファミリーが知られている。TREK1やTASK1を始め、多くのK2Pチャネルが創薬標的として高い注目を集めているものの、特異的かつ選択的に有効な新規化合物は未だ報告されていない。 TREK1を定常発現させたKir2.1+Nav1.5発現試験細胞において、24ウェルプレートにて電気刺激による細胞死判定を行った。その結果、阻害薬によって細胞死が再誘発されたことからK2Pチャネルが本スクリーニング系に応用できることが明らかになった。また、24ウェルプレートにて、TASK1, TASK2, TASK3, TREK1を一過性あるいは定常的に発現させた試験細胞に対してBa2+による新規法を応用した。その結果、各チャネルの活性化もしくは阻害によって細胞死の割合が想定どおりの変化を示し、新規法が有効であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①Ba2+超感受性新規変異型K+チャネルの作成には至っていないが、Kir2.2+Nav1.5の定常発現試験細胞が、従来のKir2.1+Nav1.5発現試験細胞より10倍程度Ba2+感受性が高いことが判明した。また、従来のKir2.1発現細胞において、他のK+チャネル(特にK2Pチャネル)に影響を及ぼさない濃度で、標的チャネルへの薬物の作用を評価することが可能であったため、K2Pチャネル特異的開口あるいは阻害薬のスクリーニングを行う上で支障にはならないと考えられる。 ②24ウェルプレートにおいて、手動操作の電気刺激およびBa2+による細胞死誘発によって、パッチクランプ法と同等の正確性でK2Pチャネル(TASK1, TASK2, TASK3, TREK1)作用薬アッセイが可能であることが判明した。再現性のある結果が得られていることから、96あるいは384ウェルプレート上での自動操作によるスクリーニングにつながる成果であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
①引き続き既存の報告を基にして、Kir2.2をベースにしたBa2+超感受性新規変異型K+チャネルの作成を行う。 Ba2+を用いた新規法をK+チャネルのみならず他のイオンチャネルにも応用するためには、使用するBa2+濃度を減らす必要がある(現在100μMで使用している)。そのために、Kir2.2+Nav1.5定常発現試験細胞に対して標的チャネルを定常発現させた細胞を作製する。
②これまでのところ、24ウェルプレート上での手動操作によって、再現性よく良好な結果が得られている。大規模スクリーニング系への応用には96あるいは384ウェルプレート上での自動操作による薬効評価が必須であるため、スクリーニング系の大規模化・自動化を行い、手動操作と同様の結果が得られるかを明らかにする。大規模化・自動化に成功した後は、東京大学の創薬オープンイノベーションセンターの大規模化合物ライブラリー(1万検体程度)を用いて、シード化合物の発見を目指す。
③創薬標的となるK2Pチャネル定常発現試験細胞のバリエーションを増やし、随時大規模化・自動化を行って、化合物ライブラリー(1万検体程度)を用いて、シード化合物の発見を目指す。
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Causes of Carryover |
①2016年度に、Ba2+超感受性新規変異型K+チャネルや、Kir2.2+Nav1.5定常発現試験細胞に対して標的チャネルを定常発現させたモデル細胞を作製する予定であった。しかし、従来のKir2.1発現細胞でも、Ba2+を用いた新規法により、K2Pチャネル特異的開口あるいは阻害薬のスクリーニングを行うことが可能であることが判明した。そのため、上述の予定よりも従来のKir2.1+Nav1.5定常発現試験細胞を用いた研究を優先し、当初使用する予定だった予算を使用しなかった。 ②24ウェルプレート上での手動操作による新規法のバリデーションに想定以上の時間を費やしてしまった。そのため、大規模化・自動化を目的とした東京大学の創薬オープンイノベーションセンターとの共同研究の開始が遅れてしまい、当初使用する予定だった予算を使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
①Ba2+超感受性新規変異型K+チャネルや、Kir2.2+Nav1.5定常発現試験細胞に対して標的チャネルを定常発現させたモデル細胞を作製する。また、Kir2.1+Nav1.5定常発現試験細胞に対して、第3のチャネルとしてK2Pチャネルを定常発現させた細胞のバリエーションを増やす。 ②東京大学の創薬オープンイノベーションセンターとの共同研究により、大規模化・自動化を行う。また、大規模化合物ライブラリー(1万検体程度)を購入して、シード化合物の発見を目指す。
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