2016 Fiscal Year Research-status Report
ケイ素の拡張型バイオアイソスターとしての新たな展開
Project/Area Number |
16K15137
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 祐一 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (90164798)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ケイ素 / エストロゲン受容体 / バイオアイソスター / シラノール / 酸性度 / アンドロゲン受容体 / グルココルチコイド受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ケイ素の新規バイオアイソスターとしての有用性の展開として今年度は、シラノールの水酸基のブレンステッド酸性度の高さに注目して、シラノール基と、いくつかの医薬シーズに散見される酸性水酸基であるヘキサフルオロイソプロパノール基の互換性の検討を行った。また、ケイ素の新規バイオアイソスターとしての有用性を検証するために、ケイ素一原子を炭素一原子の交換が当該生物活性化合物の活性に与える影響を精査するも必要であるために、主としてNuclear Receptorについて、既知骨格のシラ化が活性に与える影響を解析した。Nuclear Receptorとしては、Estrogen Receptor, Androgen Receptorなどのステロイドホルモン受容体、加えてRAR等のレチノイド関連受容体、さらには核内ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)を初めとする代謝性核内受容体に対する活性を調査した。特に後者については、今後のケイ素を導入する活性化合物を見極めるため、新たにアセチルCoAカルボキシラーゼ2阻害活性を併せ持つ化合物の創製を行った。 ケイ素と炭素の比較のみで構造活性相関を引き出すのは説得力に欠けると考え、特にジフェニルX型の骨格について、二つのフェニル基を連結する「X」部分として、ケイ素・炭素に加え、硫黄原子や酸素原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子等の異原子群を導入して活性を比較することも試みた。活性としてはエストロゲン受容体、ならびにステロイドスルファターゼに及ぼす活性を中心に検討した。 本年度中に扱った化合物群に関しては、ケイ素の導入により活性が減弱する例が多かったが、かえってそのために、ケイ素への置換により、複数の活性を併せ持つ活性化合物の創製が容易になり、生理活性物質創製のための新技術として提案しうる可能性を示唆したと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネガティブな点としては、(1)モデルとした化合物が元々活性的に成熟した化合物であるため、ケイ素の導入によって活性が減弱してしまうこと、(2)ケイ素ユニットを導入した化合物の合成の困難さ(物性の問題)によりケイ素導入化合物の創製数が限定されていること、がある。 しかしその一方で、上記(1)でいう活性の減弱により、かえって他の複数の活性を併せ持った性質が観察しやすくなり、活性の選択性の解析が可能となった。そのため、炭素とケイ素の交換等による、生物活性の変化に関する議論が拡充できると考えられた。特に今年度は、今後、ケイ素を導入して本研究課題の素材とすべき生物活性物質として、新規核内ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(α/δ)リガンドの創製に成功した。加えて同リガンド活性とアセチルCoAカルボキシラーゼ2阻害活性を併せ持つ化合物群の創製にも成功した。 よって総合として評価区分を「(2)大旨順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
特に本研究課題申請当初の方策を大きく変更する必要はないと考えている。上記「現在までの進捗状況」に記したとおり、活性の減弱がかえって多重薬理活性の選択性に関わる幅広い議論を可能にした点を踏まえ、「ケイ素のバイオアイソスターとしての利用」を既知のすでに成熟した活性化合物に応用するよりも、未熟かつ単純な骨格の化合物において活性比較する実験研究に、より注力する方針とする。そのことによって、「合成の困難さ」を克服しつつ、次段階に向けて確実な基盤となる基礎データを蓄積し、本課題のミッションを遂行する。
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