2016 Fiscal Year Research-status Report
特異体質性副作用誘発特性を予測するインシリコ手法の構築
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16K15156
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 洋史 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80206523)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本間 雅 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60401072)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 薬剤反応性 / 薬理学 / 免疫学 / トランスレーショナルリサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
特異体質性薬物副作用は、重篤な症状を呈するケースが多く含まれ、新規上市された医薬品の撤退に繋がる例が多いにも関わらず、患者の副作用発症リスク、および化合物の副作用誘発リスクを予測評価する手法は確立されておらず、重要性が高い未解決課題と言える。近年、特異体質性副作用と患者HLA遺伝子型の相関が数多く報告され、薬物分子が特定遺伝子型のHLAタンパク質に結合し、提示されるペプチドレパートリーに異常が生じることで、免疫応答が刺激されて発症に繋がると考えられている。本研究では、化合物の分子構造と各遺伝子型のHLAタンパク質立体構造を基に、ドッキングシミュレーションによって相互作用を高精度に予測する、in silicoスクリーニング手法の構築を目指している。初年度である平成28年度は、HLA-B*15:02とcarbamazepineなど、特異体質性皮膚障害との強い関連性が報告されている組み合わせを中心に解析を進めた。過去の報告(Illing PT et al, Nature, 2012)ではsupplemental informationとして、carbamazepine分子が抗原提示溝内部において、Fポケットとは異なる部位に相互作用する可能性が指摘されているが、当研究室で同じ条件を用いて検証を行なったところ、HLAタンパク質に提示される抗原ペプチドレパートリーは、carbamazepine暴露の有無によって影響されず、またHLA組換えタンパク質抗原提示溝内部へのcarbamazepine分子の結合も検出されなかった。さらに、他の薬物分子とHLA遺伝子型の組み合わせに関して、同様にスクリーニングを行なったが、これまでに見出しているabacavir及びnevirapine以外のケースでは、HLA抗原提示溝内部への薬物分子の結合は見出されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初に想定していた、HLA抗原提示溝内部に対して薬物分子が相互作用するケースは多くないことが明らかとなったため、HLAタンパク質の表面に直接薬物分子が結合する可能性を想定し、これを直接的に表面プラスモン共鳴手法を用いて検出する手法を構築して検証を進めるように計画を変更して進めており、最終的な目標達成への道筋には大きな影響はないと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の検討により、薬物分子がHLAタンパク質の抗原提示溝内部ではなく、表面に結合するケースの方が一般的であると考えられた。この場合、固相化したHLAタンパク質への相互作用を表面プラスモン共鳴手法によって直接検出することが可能である。そのため、異なる遺伝子型のHLAタンパク質と比較する、さらにHLAタンパク質表面のアミノ酸残基に点変異を導入したHLAタンパク質と比較するなどの手法で、薬物分子の相互作用部位を特定することができると考えられる。本研究では、様々な薬物と特異体質性副作用の組み合わせに関して解析するために、20種類以上の遺伝子型に関してHLA組換えタンパク質の発現系を構築している。そこで、まずこれらのHLAタンパク質をセンサーチップ上に固相化し、各種の薬物分子との相互作用を、臨床における相関関係が知られていない組み合わせも含めて網羅的に測定する。この結果を踏まえ、各薬物分子がHLAタンパク質の表面で、どのような位置に結合する可能性が考えられるかを、粗く絞った上で、想定される部位周辺のアミノ酸残基に点変異を導入した変異体を作成し、より詳細に相互作用するアミノ酸残基の位置を特定する。さらに得られた結果を用い、ドッキングシミュレーション手法の構築へと進む。ドッキングシミュレーションに関しては、既にHLA-B*35:05とnevirapine分子に関して、構築を進めており、相互作用部位の位置情報が得られれば、他の薬物分子に関しても検討を進めることが可能である。
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Causes of Carryover |
研究開始当初に想定されていた、HLA抗原提示溝内部に薬物分子が結合するケースは少なく、そのためnanoLC-MSを用いたペプチドレパートリーの解析を大規模に行う必要がなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の発見を受け、現在は表面プラスモン共鳴手法を用いた薬物分子の直接結合の検出系を構築しており、本年度に多数のHLA遺伝子型に関して、直接的な相互作用を検出するための検討を実施する計画に変更しており、この費用として使用する。
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