2016 Fiscal Year Research-status Report
加齢黄斑変性症病態理解に向けた網膜色素上皮細胞Cx43のPGE2放出への役割解明
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16K15157
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
細谷 健一 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (70301033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 義行 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (20377427)
酒井 秀紀 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (60242509)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 網膜色素上皮細胞 / プロスタグランジン / 外側血液網膜関門 / ヘミチャネル / コネキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年はヒト網膜色素上皮(RPE)細胞株であるARPE-19細胞を用い、ヘミチャネル機能に関与する分子実体特定に向けた解析を行った。ヘミチャネル開口刺激として、カルシウムイオン枯渇(Ca2+-free)buffer処理を用い、処理後に生細胞非透過性蛍光基質(Lucifer Yellow)の取り込みを調査した。ARPE-19細胞へのLucifer Yellowの取り込みは通常buffer処理と比してCa2+-free buffer処理条件下において上昇し、その上昇した取り込みはヘミチャネル分子種広範を阻害するcarbenoxolone共存によって通常buffer処理と同程度まで低下した。本結果から、RPE細胞においてヘミチャネル介在物質透過機構の存在が示唆された。ARPE-19細胞をサンプルとしたRT-PCR解析の結果、ヘミチャネル分子種の中でコネキシン43(Cx43)とパネキシン1 mRNAの発現が示唆された。この中で、Cx43をRNA干渉法によって遺伝子ノックダウンさせ、同様の解析を実施したところ、Ca2+-free buffer処理によるLucifer Yellow取り込みは、controlと比して上昇しなかった。従って、ARPE-19細胞におけるヘミチャネル介在輸送に、少なくとも一部Cx43が関与することが示唆された。さらに、Cx43に対する特異的ポリクローナル抗体をモルモットへの能動免疫法にて作出し、Cx43タンパク質のRPE細胞における発現・局在を解析した。マウス眼球切片を用いた免疫組織化学的解析の結果、Cx43タンパク質はRPE細胞間のlateral膜に加え、網膜側に位置する頂端膜側における局在が示された。以上の結果から、RPE細胞においてヘミチャネル分子Cx43が発現し、本分子はRPE細胞内と網膜細胞間隙中との物質交換に役割を果たすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画において、初年度に計画しているCx43のRPE細胞における物質交換に対する役割解明についての研究はおおむね完了した。Cx43を介したPGE2放出への役割解明について、申請者らは予備的に初代培養マウスRPE細胞を用いたPGE2放出解析を行った結果、少なくとも12時間、マウスRPE細胞はPGE2を継続的に放出することを見出している。平成28年度に作出した特異的抗Cx43抗体、そして選択的遺伝子ノックダウン法を駆使し、本PGE2放出へのCx43の関与を検証することが可能と期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究について、上述の実績概要・現在までの進捗状況に記載のように、PGE2放出へのCx43の関与を決定付ける方針で遂行する。さらに、今後Cx43を含めたRPE細胞ヘミチャネルを疾患治療へ応用するにあたり、本チャネルに対し相互作用する薬物を見出す計画もまた遂行する。具体的には、承認医薬品を取り込み実験時に共存させ、Ca2+-free buffer処理時のLucifer Yellowの取り込み上昇を低下させ、その程度が強力なものを選定する。選定薬についてIC50値を算出し、本濃度を参考にして臨床応用が可能であるかを検証する。承認医薬品について、すでに20-30種類の化合物・薬物を選定しており、平成29年度に実施する予定である。また、臨床応用可能な薬物が見出された場合は網膜疾患モデル動物への投与を実施することで、RPE細胞ヘミチャネル阻害が有望であるかの検証も進める計画である。
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Causes of Carryover |
平成28年度に実施予定であった解析について、現有機器・器材にて計画研究は実施可能であったため、その都度必要な消耗品を適宜購入するのみに留まった。そのため、平成28年度において当該計画における研究費においてその多くを使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に計画している解析の中で、RPE細胞の培養に用いる高額なfetal bovine serumに加え、プロスタグランジンの定量に用いるELISAのキット、そしてRPE細胞ヘミチャネルやCx43と相互作用する医薬品を約30種類を購入するため、試薬・消耗品代として大部分は使用する計画を立てている。 また、最終年度にあたることから、国内における、そして国外における学会にて平成28年度に得られた研究成果を発表することを計画しており、研究成果発表目的の旅費として用いる。また、研究成果を論文発表する際にopen accessとして一般に広く公開することを計画し、その際の費用として用いる予定である。
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Research Products
(1 results)